映画「老後の資金がありません」や「科捜研の女 劇場版」(共に2021年公開)をはじめ、数々のドラマや舞台で活躍する実力派女優、若村麻由美が都内のホテルで記者会見を開き、宗教団体「釈尊会」会長の小野兼弘氏との結婚を発表。2004年2月26日のことである。
2人は前年9月に極秘入籍。それが一部週刊誌でスクープされ、5カ月遅れのこの日、晴れて結婚報告会見という運びになった。
岡山県に本部を置く釈尊会は、信者約1万人(当時)。バツ2という小野氏はスキンヘッドに体重150キロといわれる巨漢。しかも、ここに至るまでの2人の関係が、なんとも複雑怪奇というほかなかった。
結婚発表から遡ること5年。釈尊会には俳優の渡辺謙夫妻も揃って入信し、熱心な信者として活動していたのだが、01年、夫人による離婚裁判が勃発した。
ところが、2人を知る関係者として裁判の口頭弁論に立った小野氏が「夫人に4億5000万円を貸した」と証言。残り4100万円の返済が滞っている、と暴露したから大変。さらに、裁判で夫人が「離婚原因」として挙げたのが「渡辺の不貞」だった。その相手の一人として法廷で名指しされたのが若村だったことで、連日、芸能マスコミがこの話題を取り上げるなど、上を下への大騒ぎになったのである。
そんなドロ沼裁判から3年。突然、飛び出したのが、裁判で渡辺の不貞相手と名指しされた若村と、渡辺夫妻の「大口債権者」だった小野会長という衝撃的な取り合わせによる電撃結婚だった。
会見に和服姿で登場した若村は、結婚を決めた理由について、
「見た目のタイプではなく、何より人柄に惹かれました。(一緒にいると)大きく包み込まれている感覚です」
と言って目を輝かせたが、釈尊会に詳しいジャーナリストの大林高士氏によれば、
「小野氏は遊び方が派手で、銀座で一晩100万円を使うこともざら。若村の方が小野会長にベタ惚れだったようですが、若村が多額の借金がある小野氏に貢いでいた、という話も伝え聞きますからね。結婚生活がうまくいくかどうかは未知数でしょう」
結婚会見では「夫の栄養面なども気遣うつもり」と発言していたが、そんな小野氏が肝不全のため、2007年4月18日に突然、帰らぬ人となった。
若村はマスコミ各社に直筆のファックスで〈あまりに突然のことで、事実を受け止めることが出来ません〉とコメントした。
夫の死後、しばらく喪に服していたが、徐々に芸能活動を再開。安定した実力と、様々な経験で培われた演技力で、ドラマや映画などで再ブレイクする。皮肉にも波乱に満ちた実体験が、彼女の芸域を広げる結果となったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。