テレビ朝日で不定期に行われる「お願い!ランキング」のスピンオフ企画「総選挙シリーズ」。過去には「お菓子総選挙」「アイス総選挙」「冷凍食品総選挙」などの食べ物系や、「アニメソング総選挙」「テレビゲーム総選挙」「お城総選挙」「駅総選挙」といったマニア系のものなどを取り扱ってきた。
そして、先日行われたのが「ファン1万人がガチ投票!プロレス総選挙」(8月13日放送)。初代タイガーマスクの四次元殺法に魅了され、長州力VS藤波辰爾の名勝負数え歌に手に汗を握り、闘魂三銃士にプロレスの未来を感じ、四天王プロレスの激しさに度肝を抜かれた昭和・平成プロレス大好き人間としては、これは見逃せない番組だ。あの頃の興奮よもう一度と、大いに期待して見たのだが…。
番組冒頭、膨らんだ期待の雲行きがいきなり怪しくなった。「プロレスファン1万人に聞いた!あなたがスゴイと思う現役レスラーは誰?」のテロップに「あれ?ということは長州は?藤波は?あの頃のレスラーは?」と思っていると、スタジオにも棚橋弘至、スターライト・キッド、オカダ・カズチカら、現役バリバリのスーパースターが登場。大盛り上がりのスタジオ出演者達とは反対に、こちらはちょっと微妙…。
現在のプロレスについて、どうこう言う気は全くない。そもそも、そんなことを語れるほどの「マニア」でもないし。むしろ、一時期めちゃくちゃ下火になったプロレスが、新たなファン層を開拓して再び元気を取り戻し、こうして「総選挙」なる特番をやれていること自体、凄いことなのだから。
とはいえ、入場時も試合途中も思いっきりカメラ目線で煽るレスラー達が、ショー的要素を強め、コスチュームもパフォーマンスもいっそう派手に、複雑かつスピーディーな技の数々で圧倒させる。そんな健康的で明るい現在のプロレスよりも、「遺恨」や「闘争」といったネガティブな対立構造の中、暗くチラチラと揺れる炎のような情念を纏った選手たちが、伏し目がちに入場し、カメラもファンも払いのけて、闘う相手しか見えてないといった鬼気迫る表情で間合いの探り合いをしていた、あの頃のプロレスの方が、個人的に好きというだけなのだが。
それだけに、かろうじて4位に入った武藤敬司が「最も印象に残る試合」として挙げた、新日本プロレス対UWFインターナショナル全面戦争における、武藤敬司VS高田延彦のIWGPヘビー級選手権試合(1995年10月9日・東京ドーム)のダイジェスト映像が流れた時は、えらく興奮した。
この番組、なぜか2部構成になっていて、第1部は1位から15位まで。その後、メタバース六本木からの配信で、16位から30位が発表。第2部では31位から50位までが発表という、変則的な構成だった。
その第2部で31位だったのが、ドラゴン殺法の藤波辰爾。68歳の現役レジェンドレスラーと紹介されていたが、いまだに現役で闘っていたとは! 「ミスター・プロレス」こと天龍源一郎さえも65歳で引退したのに、68歳でいまだにリングに立ち、しかも「ドラゴンバスター」なる新必殺技まで繰り出す姿には心底恐れ入った。
とはいえ、次回は、ぜひ「1万人」と言わず、「全国3000万のプロレスファンの皆さん、こんばんは!」と古舘伊知郎が毎週呼び掛けていた「あの頃」のファンも巻き込んで、全世代、全団体の人気投票をやっていただきたい。
(堀江南)