05年から始まった日曜朝の井戸端会議的バラエティー「はやく起きた朝は…」(フジテレビ系)などで、安定した人気を維持する森尾由美。その結婚記者会見が92年11月9日、麹町にあった日本テレビのGスタジオで行われた。だがこの結婚会見、とにかくハチャメチャだった。
コトの発端は、森尾がレギュラー出演する「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ系)収録中、よほどルンルンで黙っていられなかったのか、森尾自身が「私、アメリカで結婚しました」と、極秘入籍したことだった。それが写真誌に報じられたのだ。
出演者のビートたけしや松方弘樹はじめ、番組スタッフは初耳で仰天。私も早速、所属事務所に問い合わせたのだが、その後、編集部宛に1枚のファックスが届いた。
だが、そこには「会見日時:午後6時より。場所:日本テレビGスタ」に続き、「なお、当日は『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の出演者、ビートたけし、松方弘樹ほかレギュラー全員が立会人として会見にのぞみ、番組の一部として使用することをご了承ください」との文言が。つまり、会見の模様を全て、番組にするハラなのである。
日本テレビ関係者を取材すると、「どんなことをやるのか、外部には漏れてきていないが、たけし主導で何か面白いことを企んでいるようですよ」とのことだった。
そして、記者会見当日。予想通り、父親に扮した松方と、日本髪のかつらで着物を身に着けたたけしが、並んで登場。のっけから、たけし節が炸裂した。
「はい、なんでも答えます。森尾由美はつわりのため、トイレでゲーゲー吐いています。楽屋ですっぱいものを食べたがっています」
結婚相手の等身大パネルを手に、ウェディングドレス姿で現れた森尾は妊娠4カ月で、翌年5月には出産予定だという。相手のA氏は、カリフォルニアを拠点に貿易などの仕事を手掛ける青年実業家。1年前、森尾が仕事でハワイへ行った際に知り合い、交際がスタートしたのだった。
アメリカと日本に分かれて暮らしているが、父親役の松方が、
「夫婦がうまくやっていくには、離れちゃダメ。一緒に住むことが一番」
と夫婦円満のコツをアドバイスすると、たけしも自虐ネタをブチかます。
「夫婦円満にいかせるには、離れて暮らすことです」
会場は大爆笑だ。最後は森尾が、喜びを爆発させて締めくくる。
「仕事を辞めてもいいと言ってくれています。一人暮らしの者が2人いると思えばいいじゃないか、とも。出産を無事に終えて、来年のいい日を選び、サンフランシスコで結婚披露宴を開きます」
結局、30分間の記者会見で、森尾がきちんと質疑応答できたのは10分程度。あとは、たけしや松方ほか、「元気が出るテレビ」メンバーに終始、翻弄されたのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。