この50年超に及ぶ統一教会問題の深い闇を暴いたのは、7月8日、奈良市内で山上徹也容疑者が安倍晋三元総理へ放った凶弾だった。蜷川氏がその功罪を問う。
「山上容疑者は肉親の怨恨により犯行に及んだが、『一発の銃声は十萬の動員に勝る』という結果となった。旧統一教会の反日思想が明るみになったわけだが、この間、日本人は統一教会が名前を変えたことに誰も興味を持っていなかった。その意味で山上容疑者の起こしたことは意味があった」
未曽有の銃撃事件を評価しながらも、こう続ける。
「今回の事件では、当初被害者の安倍さんに同情が集まっていたが、今は批判に変わっているのは気の毒なことだ。それも統一教会の怨念、本当の意味での天誅なのかもしれない。近代史を振り返れば、原敬や浅沼稲次郎の暗殺事件があったが、それにより政友会や社会党がなくなったわけではない。しかし、自民党は真の政党を目指すならウソを重ねないでオープンな政治をしなければ危うい。27日の国葬がチャンスになるだろう」
事件から6日後の7月14日、岸田文雄総理は、安倍元総理の国葬を行うと発表した。これを危惧するのが、下山氏だ。
「山上容疑者は戦後の政治と宗教問題、統一教会と自民党の闇を暴いた。しかし、国葬には反対します。すでに韓国の旧統一教会イベントで先んじて安倍元総理の写真を掲げ追悼していた。この上、血税を投じて大々的な国葬を行えば再び旧統一教会の宣伝になってしまう可能性があるのです」
87年から昨年までの35年間で霊感商法による被害は約1237億円。これ以上、盗人に追い銭はまかりならないのだ。犬塚氏が大局的な見地から語る。
「家庭を崩壊された山上容疑者は統一教会幹部を直接狙わずに安倍元総理を狙った。今、統一教会は窮地に追いやられており、結果的にテロは有効だったと言える。一方、安倍元総理は前日に急きょ演説場所を容疑者のいる奈良に変更した。まるで自らまっすぐ死に場所に向かっていったようだ。森友・加計問題など批判を受けたが、長い歴史の中で見れば非業の死を遂げたことでますます存在感が強まったともいえる。その評価はこれから下されるはずでしょう」
国葬に関して、二階俊博元幹事長は「やらなきゃバカ」とのたまったが、このままでは列島分断は必至。当の安倍氏は草葉の陰から9.27国葬をどう見るのだろうか。