ウクライナ軍の反転攻勢により劣勢に立つロシアだが、ここにきてプーチン大統領が「戦術核兵器」を使用するのではないかと危惧する声が高まっている。
9月19日には、ウクライナ南部のミコライウ州ユズノウクラインスクにある南ウクライナ原子力発電所付近に、ロシア軍のミサイルが着弾。原発から300メートル離れた工業団地の建物の窓ガラス100枚以上が割れたという。また、この攻撃で原発に隣接する水力発電所が一時運転する事態に陥り、ゼレンスキー大統領は「ロシアは世界全体を危険にさらしている」と訴えている。
事実、プーチン大統領は21日に国民向けのテレビ演説で、予備兵や軍事的専門性を持つロシア国民を動員するとした上で、さらにこうも付け加えた。
「ロシアの領土の一体性への脅威が生じた場合、国家と国民を守るために、あらゆる手段を行使する。これはハッタリではない。核兵器でわれわれを脅迫するものは、風向きが逆になる可能性があることを知るべきだ」
要するに、「いざとなばれ核兵器を使用する」と明言したのだ。軍事ジャーナリストが解説する。
「9月に入ってからウクライナ軍の反転攻勢が続き、ロシア軍の撤退が各地で始まっているといいます。武器をその場に捨てて敗走する兵士も多く、これは軍の末端から現場指揮官まで士気が低下し、統率がとれなくなっていることを示唆している。本来であれば大規模な反撃と突破作戦を行わなければなりませんが、戦力的にもかなり厳しいと伝えられています。そこで苦し紛れの予備兵導入に打って出た。いよいよ窮地に追い込まれている証左です」
狂気の殺戮王の「本気度」について、政治ジャーナリストは、
「今回、ロシア軍が原発付近にミサイルを撃ち込んだのは、『核攻撃も辞さない』という構えを見せつけるためでしょう。もし核が使用されたとしても、ウクライナがNATO加盟国ではないことから、欧米の核保有国が核兵器で応戦することはありませんからね。国際社会からつまはじきにされるのは必至ですが、プーチン氏がそれすらも一切考慮せず暴挙に出る可能性は十分にあります」
ロシアが追い込まれればそれだけ、最悪の事態が近づいているということなのだ。
(ケン高田)