残暑に身悶えしている今日この頃だが、10月を迎える今週、秋の中山開催の最後を飾るのは、恒例のGIスプリンターズSだ。
芝1200メートルで行われる電撃の6ハロン戦は、これまで数々のドラマを生んできた。世界のトップに躍り出た傑出したスピード馬も何頭かおり、国際的にも高く評価されているGI戦。今年もスプリント戦に初挑戦するシュネルマイスター(NHKマイルC勝ち。マイルCS、安田記念僅差2着)を筆頭として、スピード自慢がズラリと居並ぶ豪華版である。
いずれの馬が頂点に立つか、目を離せない熱戦が繰り広げられることと思うが、とにもかくにも一筋縄では決まるまい。台風などで雨が多かった秋の中山開催だが、馬場が荒れてきた最終週、直線に坂があることもあり、スピードだけで押し切れるかどうか。そのあたりが微妙に影響しそうでもある。
まずは過去のデータを見てみよう。02年に馬単が導入されて以降、これまでの20年間、その馬単での万馬券は4回(馬連は1回のみ)。であれば比較的穏やかな配当で決まっているように思えるが、この間、1番人気馬は8勝(2着3回)、2番人気馬は2勝(2着8回)、1、2番人気馬によるワンツー決着は3回しかない。やはり順当な決着をみることは少なく、いわば中穴傾向のGI戦ととらえてよさそうだ。
年齢的には他の重賞同様、素質開花した4歳馬、充実著しい5歳馬の活躍ぶりが目立っているが、古豪の6歳馬も5勝(2着1回)と侮ってはいけない。
また、怖いのは3歳馬。出走してくることはそう多いとは言えないが、昨年ピクシーナイトが勝利したように、よく上位争いを演じており、2勝(2着1回)をあげている。今年で言えばウインマーベル、ナムラクレアなどは要注意馬と言えるだろう。
悩むところだが、最も期待を寄せてみたいのは、マリアズハートだ。
6歳馬は侮れないと前述したが、最右翼とみられるシュネルマイスターは安田記念以来のレースであり、また6ハロン戦は初めて。そのへんに一抹の不安があることを思えば、経験豊かなこの馬の出番があってよく、チャンスありとみてイチオシしたい。
人気薄であることも穴党としては大いに食指が動くが、実際、芝6ハロン戦の実績はなかなか。しかも中山でのそれは〈3 3 0 2〉。連対を外した2回は、休み明けで勝った次のレースで大幅な体重減が影響したものと、最内枠を引いたことが災いして、道中、進路をふさがれたことによるもの。
いわば敗因がはっきりしているわけで、この馬にとって中山の芝1200メートル戦は、能力を全開できる格好の舞台なのだ。狙わない手はなかろう。
状態もすこぶるいい。前走のアイビスSDは7着に敗れたが、2カ月の休み明けのうえ、不利な内枠(3枠6番)だったため、やむを得ない結果だった。しかし休み明けを一度使われた今回は、厩舎関係者の思惑どおり、中間、大幅な良化ぶりを見せている。
「6歳馬だが元気いっぱい。馬体が締まって、実にいい雰囲気にある」
菊沢調教師をはじめ、厩舎スタッフは、そう言って仕上がり状態のよさを強調する。
1週前の追い切りは軽快かつリズミカル。走れる態勢にあることは間違いなさそうだ。
父シャンハイボビーは、GI米BCジュヴェナイルの覇者で、母の父マライアズモンも米GIシャンペンSの勝ち馬。一流血脈の母系でもあり、血統的に見てもこの舞台で頂点に立っていい存在。パワーも兼ね備えており、晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。