薫風の5月、果実がたわわに実る10月。1年を通して最も心地よい季節を独占するかのように東京競馬は行われる。秋のこの開催もGI戦を含め、目の離せない重賞が目白押しだ。
その開催替わりの第一弾は、今年で第72回を数える伝統ある毎日王冠。周知のとおり、10月30日に行われる天皇賞・秋の前哨戦で、1着馬に盾の優先出走権が与えられる。
シュネルマイスター、ダノンキングリーのGI勝ち馬を筆頭に、出走各馬のほとんどが重賞勝ち馬。本番の盾に向かうにせよ、マイル路線を歩むにせよ、ここでどんな競馬を見せてくれるのか、興味は尽きない。
とにかく顔ぶれが顔ぶれだけに、馬券的にもおもしろそうだ。
ここ6年間は比較的順当に収まっているが、だからといって簡単ではない。馬単導入後、これまでの19年間、その馬単での万馬券は6回(馬連は3回)。この間、1番人気馬は8勝(2着2回)、2番人気馬は2勝(2着3回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は3回と、まれに人気薄も頑張っており、まずは中穴傾向の重賞と言っていいだろう。
年齢的に見てみると、ここ何年かは若くて登り坂にある3歳馬の活躍が目立つようになっている(4勝、2着4回)。背負う斤量が軽いこともあるが、春のクラシックやGI戦線で上位争いを演じた馬が出走してくるからだろう。
その意味でもNHKマイルCの覇者で、ルメール騎手とコンビを組むシュネルマイスターは、チャンス十分とみてよさそうだ。
そしてノビシロのある4歳馬も5、6歳の古馬を向こうに回して頑張っている(5勝、2着4回)。
ということで、本来は生きのいい3、4歳馬に目をつけるべきだが、年齢を問わず、仕上がり状態のいい実績馬が上位争いを演じる傾向も見て取れる。このことから、今年はあえて古馬を主力に選ぶことにしたい。
最も期待を寄せたいのは、すでに峠は過ぎたと思われている6歳馬のサンレイポケット。シュネルマイスターなどの有力どころと同様、休み明け(4カ月)の一戦だが、臨戦態勢はきっちりと整えられており、力を出せる状態に仕上がっているからだ。
「前走(鳴尾記念6着)のあと、放牧に出して秋に備えることにした。早くからここを目標に置いて調整してきており、中間の稽古内容は満足いくもの。初戦から楽しみ」
こう厩舎スタッフは口をそろえ、ヤル気のほどをにじませる。確かに1週前の追い切りは躍動感たっぷりで、なかなかだった。
昨年の毎日王冠は勝ったサリオスにコンマ5秒差の3着だったが、「パワーアップしている今年なら、やれていい」(高橋忠調教師)とあっては、買わない手はない。
強烈な末脚が武器であり、身上。チャンスは十分あるとみた。
一方、阪神で行われる京都大賞典も盾の前哨戦(1着馬に盾の優先出走権)で、毎日王冠より600メートル長い芝2400メートルで争われる。そのため、長距離に実績のある馬に注目したい。
狙ってみたいのは、ディアマンミノルだ。
有力勢に比べると格は劣るが、徐々に力をつけてきており、前々走の函館記念は一線級に伍して見せ場たっぷりに4着と頑張った。栗東に帰厩後も順調で、雰囲気が実にいい。
祖母はオークス馬のイソノルーブルで、父が三冠馬のオルフェーヴル。オクテの血統を思うと、ここにきて「素質開花近し」の印象さえある。
5走前に同じ阪神芝2400メートルで行われた御堂筋Sで勝利をあげているように舞台適性も十分。好走必至とみた。