俳優として活躍したのち、朝のワイドショー「ルックルックこんにちは」(日本テレビ系)で13年半にわたり司会を務めてきた岸部四郎が亡くなって、今年8月で2年の月日が流れた。
岸部は69年に沢田研二がボーカルを務め、兄・岸部一徳がベースを担当するグループサウンズ、ザ・タイガースにギターとタンバリン担当で加入。78年にはドラマ「西遊記」(日本テレビ系)の沙悟浄役で人気者になり、84年から同局で「ルック」を担当することに。
しかし98年4月6日、突然、番組に司会降板を申し入れる。番組終了後、スタッフに挨拶もせず逃げるようにスタジオから去ったことで、大騒動に発展したのだった。
翌7日、忽然と姿を消した本人に代わって記者会見を開いた弁護士は、降板の理由について、
「現在、自己破産の申し立てをしています。負債額は3億6000万円と、税金が6千数百万円。判明していない負債は調査中で、あと1億いくかどうか…。破産の直接の原因は、昨年4月、友人の借金の保証人になったことです」
岸部に5億円を超える借金があることを明かしたのである。
岸部の自宅を訪ねるも、インターフォンには反応なし。そこで、岸部が4年前に再婚した14歳年下の夫人と一緒に開いた、東京・南青山にある古美術店「プチ・ルーブル」を訪ねたが、こちらもシャッターが閉められたまま。
そこで周辺を取材すると、前夜には金融ブローカーらしき債権者らが多数、店に押しかけてきたものの、すでにもぬけの殻だったという。
「大声で怒鳴り散らしたり、シャッターを蹴り飛ばしたりと、皆さん、それは凄まじい形相で。一目で『その筋』とわかる業者も数名いましたね」(近所のオフィスに務める会社員)
日本テレビ関係者を取材すると、降板を申し入れた際、岸部は未払いのギャラ450万円を「振り込みではなく、現金で受け取りたい」と言ってきたそうだが、局側はこれを拒否。この関係者が言うには、
「結局、上層部以外、『ルック』スタッフさえも、事情がよくわからない、寝耳に水としか言いようのないドタバタの降板だったようです」
かねてから、古美術品やブリキ玩具などの収集で知られ、高級ブランドで身を固めていたという岸部。前出の日テレ関係者によれば、
「バブル期には米国と都内にディスコをオープンしたり、ヘリコプターリース会社を経営したりして、羽振りもよかったようですが、バブル崩壊でいずれも倒産したと聞いています。噂ではヤバイ業者からの借り入れもあったといいますから、厳しい追い込みをかけられていた可能性はありますね」
結局、身の危険を感じ、夫人と共に身を隠したのだろう。その後、岸辺の自己破産が成立したが、億万長者から無一文に。天国と地獄を味わうことになったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。