秋の紅葉シーズンを前に、奈良公園を訪れる観光客は、修学旅行生をはじめとして、徐々に戻ってきているという。
今年8月、3年ぶりに開催された古都・奈良の夜をろうそくの明かりで彩るイベント「なら燈花会」には、8月5日から14日までの10日間に、約67万人の観光客を数えた。
外国人観光客が徐々に戻りつつある中で、奈良公園の鹿たちも大好物の鹿せんべいをもらい、満足しているかと思いきや、どうやら少し事情は違うようで…。
奈良公園内の土産物店の店主が説明する。
「鹿たちはまだお腹を空かしています。確かに観光客は、一昨年や作年に比べて、徐々に戻りつつあります。8月のお盆の時期や9月の連休も、多くの人で賑わいました。コロナ禍前でしたら、土・日・祝日の午後になると、鹿せんべいをあげてもお腹いっぱいで食べない鹿が多く、鹿のとなりにせんべいが積み上がっていることが多かった。ところが今は、観光客が多い土・日・祝日の夕方でも、鹿せんべいを求めて観光客に集まってきているんです。恐らく、満足のいく数のせんべいをもらえてないのでしょう」
実は鹿せんべいの購入事情に異変がある、と店主は続ける。
「コロナ禍以降、鹿せんべいを買う常連さんと、買わない人との二極化が進んでいるんです。常連さんは10束以上買う人も多くみられます(1束10枚で200円)。しかし、観光客の中には『200円も鹿に使うのはもったいない。だったら自分が食べるお菓子を買った方がいい』という人も多くいます。鹿の写真だけ撮って帰る人は増えていますね」
コロナ禍前は鹿せんべいの食べすぎで、腹を壊す鹿も多かったというが、
「なにしろ中国人観光客が大量にやってきて、鹿せんべいを爆買いしていました。それこそ1万円以上も使う観光客も多くいましたからね」(前出・店主)
10月11日から水際対策が大幅に緩和され、中国人をはじめとする外国人観光客の訪日に、大きな期待がかかる。奈良公園の鹿たちも、彼らの来訪を心待ちにしているのかもしれない。