20年には、東京五輪が開催されるが、日本サッカー協会の大仁邦弥会長は昨年末、代表のキャンプ地にJヴィレッジを使うことを希望した。Jヴィレッジは現在、福島第一原発の対応拠点となっている場所である。
また、民主党にいたっては、今年2月に、福島での競技開催を提言している。反対意見は圧倒的である。
「福島に対しては、除染、賠償問題などを優先して早く事に当たるべきです。そんな五輪パフォーマンスに時間を費やすなんて、県民感情とズレていますよ」(野口氏)
福島での五輪開催こそ「偽善」であると、回答結果は判断しているのだ。事故の責任者について、合計76%が「東京電力」と「原発を推し進めた政府」としている。電力会社も、政府も原発の再稼働を希望しているが、健康被害を抜きにして原発を批判することはできるのだろうか。
「原発は4つの理由で、ダメなのです。1つが原子炉の安全問題。2番目が放射性廃棄物の処分問題。3番目が核兵器への転用問題。最後に原発に対するテロの問題です。これを考えれば、今の社会情勢では原発は難しい」(野口氏)
野口氏は、事故以前から原発に反対の立場であるが、雁屋氏の批判姿勢の間違いをこう指摘する。
「雁屋さんは、原発の反対を訴えるあまり被害をねじ曲げたのです。被害がひどければひどいほど、反対が増えるだろうという考えです。そういうやり方をしていたら原発反対の人は信頼を失い、社会から批判を受けることになります。原発の是非と、放射線の影響の有無は別問題で、それを混同させてはいけません」
作品では、双葉町前町長の井戸川氏が鼻血と被ばくの関係を証言した。相次ぐ批判から、みずからの鼻血をフェイスブックに掲載し、応戦したのだ。
社会部記者が明かす。
「事故から約1カ月後の11年4月5日に、『原発、増設見直し時期尚早』という記事が福井新聞に掲載されました。当時、政府は原発増設計画の見直しを進めていました。記事は、8人の原発立地市町村の代表者らが、『原発廃止はありえない』と、判断を思いとどまるよう官邸に請願しに行ったという内容でした。その中には井戸川氏もいたのです」
その数カ月後、井戸川氏は、参院選に原発反対という真逆の主張を掲げて立候補しているのだ。
渡邉氏は、政治と原発反対運動の関係をこう分析する。
「原発問題は野党左派系の人たちがやっていました。94年の社会党、09年の民主党と2つの失敗で、彼らに政権能力がないことが明らかになってしまったのです。福島の事故で、原発に対する主張だけは正しかったことが証明されてしまった。彼らにとって被害者は被害者であり続けないと、みずからの正当性が保てないのです。そうした人たちこそが、福島県に対する最大の加害者だと考えます」
原作者の雁屋氏は、自身のブログで、本格的な反論を出すと予告している。