テリー で、今回はアレでしょ。本を2冊ほぼ同時に出したんだよね。
野沢 そうなんですよ。エッセイと小説を。
テリー いつ書いてたの?
野沢 書き始めたのは1年ぐらい前ですかね。
テリー これ、1年で書くんだ。すごいな。
野沢 だいたい3カ月ぐらいで編集の方にお渡しして。「ここを書き直してください」「ここを書き足してください」っていう指示をいただいて、少しずつ書き直したりして。それで1年ぐらいですかね。
テリー 本を書きたいって自分から言ったの?
野沢 吉本興業で芸人さんに本を書かせようみたいな流れがあって。「老いに向き合う」みたいなテーマを出したら、けっこういろんな出版社の方が興味を示してくれたんですよ。
テリー エッセイとかコラムは俺も時々書かせてもらうけど、よく小説なんか書けるよ。
野沢 私けっこう書くのが好きで、わりと昔から書いていて。小説も今までに2冊ぐらい出してるんですよ。
テリー で、今回の主人公はスーパーで働く55歳の女性。
野沢 けっこう太っちゃってて、加齢で醜くなったことを気にしているような、私と同世代の女性ですね。六畳間の自宅とパート先の往復をひたすら繰り返す毎日で、家に帰るといつも「灰色のハイエナ」に見られているような幻影に悩まされているっていう。
テリー なんか、生きる希望を全然持ててないというかね。
野沢 人生を振り返った時に「私の人生、全然イケてなかったな」とか「いいこと全然なかったな」と思ったとしても、幸せを目指すのは何歳からでも全然遅くないっていうことを、特に同世代の女性に言いたかったですね。
テリー 文章にすごく説得力があってね、例えば野沢の友達とか、具体的な誰かに向けて書いたのかなと思ったんだけど、誰かイメージする人はいたの?
野沢 いや、それはなかったんですけど。
テリー そうか。特に俺、あそこが良かったよ。ネタバレになっちゃうから、どこまで話していいかわからないけど、最後のほうで主人公が半月に向かって走っていくところ。
野沢 あ、嬉しいです。あそこがやっぱりこの小説のハイライトで。これまでの人生全然イケてなくて、もう年も取って、太っちゃってたとしても、50代ならまだ人生30年40年残ってるんだから、もう1回走ったっていいんじゃないかっていう。
テリー その通りだよね。
野沢 この主人公が何に向かって走ってるかは、読んでもらえると嬉しいんですけど。
テリー これさ、自分で監督して映画にしなよ。角川映画でいいじゃん。
野沢 また、そういうことを(苦笑)。