テリー エッセイもテーマは老いでしょう。どこがそんなに老いてるの?
野沢 見た目も劣化してきたし、物忘れもひどいし、人の名前も全然思い出せないし、若い子の区別もつかないし。あと、SNSで流行ってる曲とかも全然理解できなくなっちゃってるみたいな。
テリー なるほど、そういうことか。
野沢 テリーさんはそういうの、ないでしょう?
テリー いやいや。だって俺、最初から理解しようとしてないから。
野沢 ああ。そういうふうに言えばいいんだ。
テリー だって、ムリじゃん。若い子とは見てきた景色も、聞いてきた音楽も全然違うわけだから。
野沢 わからないに決まってる?
テリー そう。俺たちはその前の世代で、好きなことやってきたんだから。それが、また新しいパーティーが始まったからって、途中から参加して、また楽しむって‥‥。
野沢 ズルいですね。
テリー そうそう。ズルいし、図々しいよ。70過ぎのじいさんが「18歳の子の気持ちを理解できる」ってさ。
野沢 そうか。ちょっとメモしたいな。「最初から理解する必要もない」「若い子のことはわからなくて当たり前」。
テリー そうでしょう?
野沢 でも、やっぱり最初は「こんなはずじゃない」って思ってたんですよ。感性とかも全然鈍っちゃうし。
テリー 実は俺もみんなに言ってるの。「年を取っていいことなんかひとつもない」って。
野沢 ほんと。それは私も声を大にして言いたいんですよ。時々、「年を取るのが楽しみ」とか言う人がいるけど、「ウソつくんじゃねえ!」って。
テリー わかる。
野沢 絶対、若い時のほうがいいに決まってますよ。感性は鈍るし、反射は遅くなるし、食べる量は減るし。そういうマイナスを全部受け止めた上で「元気出したいな」と思って、本を書いたところもあるから。
テリー でもね、俺が野沢とひとつ違うのは、「感性が鈍くなる」とは思ってないんですよ。
野沢 へぇ。
テリー それはなぜかって言うと、今までとは違う感性が生まれてくるんですよ。例えば老人ホームにいて、体が動かなくなったとしても、そこで生まれる感性ってあるんです。
野沢 ああ、そうか。これもメモしないと。
テリー 例えば俺で言うとね、乙女力が付いてきたんです。
野沢 「乙女力」?
テリー そう。だから、家の廊下の色もペパーミントにしたり、シックにするんじゃなくて、ものすごく乙女っぽくしたんですよ。洋服なんかも若い人は黒っぽいのが好きだけど、派手な色ばっかり着るようにしたり。
野沢 ヤダ! そういうところは感覚がちょっと似てるんだ。今度のエッセイの中にも「年を取ってきたからこそ、派手な色の服を着よう」みたいなことを書いたんですよ。
テリー 俺に抱かれたいと思ってるからね。
野沢 思ってませんよ。ほんとに、それは丁重にお断りしますけど。でも、初めて言ってることに共感できる気がします(笑)。あと、似たようなことを考えてるなっていう。
テリー 洋服なんて着たもん勝ちだからね。
野沢 そうですね。派手なものを着ると自分がそれに寄っていくし。そういう洋服の魔力みたいなのは、すごいありますよね。