連日、ワイドショーで放送されるのは、前代未聞の群衆雪崩事故の現場──。
それはハロウィンを翌日に控えた10月29日夜、「ソウルの六本木」と呼ばれる繁華街・梨泰院(イテウォン)で発生した。
死者156人(11月1日現在)を出したこの事故では、雑踏警備を怠った警察当局に対する怒りや批判が噴出。そんな中、当局は事故発生直前に「押せ!」と叫んだ煽動者がいたとして、SNSをはじめとする各種映像の収集、分析に乗り出している。
複数の韓国メディアは、その時、20歳代後半とみられる男性の「押せ、オマエたち!」との言葉をキッカケに、その友人らが「押せ!押せ!」と叫び始めたことから、大量死を招いたドミノ倒しが一気に起こった可能性がある、と伝えている。
SNS上でも「後ろのほうから『押せ。オレたちの方が力は強い。オレたちが勝とう』という声が聞こえて群衆雪崩が起こった」「ウサギのヘアバンドをした男が、最初の煽動者。コイツを捕まえなければならない」などの証言が上がっている。
発生直後から今回の事件を取材している在韓ジャーナリストは、
「本当に『押せ!』と叫んだ者やそのグループがいたとすれば、看過できない問題になる。一方で当局が、事故を引き起こしたとされる煽動者やグループに国民の目を向けさせ、警備の失敗に対する自分たちへの怒りや批判を血眼でかわそうとしているのもまた事実だ」
こう指摘した上で、次のように明かすのだ。
「実は、押せ押せ疑惑が急浮上した後、警察当局は、事故が起きた路地に立つホテルの違法増築によって道幅が狭められていた疑惑を、マスコミにリークしています。そんな中、SNS上では、ヘアバンドではないがウサギのコスプレで身を固め、群衆の後方に立っていた若い男性の映像や画像がアップされ、押せ押せ疑惑はヒートアップの一途を辿っている。その結果、遺族をはじめとする国民の怒りや批判は今、当初の警察当局から、煽動者とグループ、違法増築を行ったホテルなどへと、次第に分散しつつある。支持率が下落し続けている尹錫悦政権にとっても、都合のいい流れということですね」
事故の真相と責任はどこにあるのか。今後の動向が注目されるゆえんである。