日本人女性2名を含む、15カ国156人の犠牲者を出す大惨事となった、ソウル・梨泰院(イテウォン)転倒事故。韓流ドラマで有名な観光名所として知られるが、その“素顔”には、歴史に隠された光と闇があった‥‥。
ハロウィンを直前にした10月29日22時過ぎ、ソウル市龍山区にある梨泰院。駅からほど近い、幅3メートル超、長さ40メートルという極めて狭い範囲に数千人(周囲を含めれば、数万人に上るとみられる)もの群衆が殺到した。さらに傾斜のある坂道という悪条件が重なり、人々が将棋倒しとなった結果、想像を絶する被害者を出してしまったのだ。
あの「セウォル号」の悪夢を彷彿させる大惨事に韓国政府も素早く対応。尹錫悦大統領自らが陣頭指揮を執って事後処理にあたっているが、ネットを中心に“犯人捜し”が過熱するなど、韓国世論の目は厳しくなっている。中には、動画をアップしてまで「犯人」を特定しようとする動きもあるようだが‥‥。そのような状況に対し、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏はこう話す。
「被害者を含め、現場にいた多くが若い人です。それだけに、威勢に乗って『早く行け』だの『押せ』だの言った人物はいたようですが、それが直接事故の刑事責任となるかどうかは、また別の問題です。“群衆の中における犯人捜し”は確かにありますが、それがリアリティーを持った犯人捜しになるかと言えば、それはないと思います」
地元の一部報道では「うさぎ帽子」を被った人物が押したのでは、との噂が錯綜しているが、やはり論理的に考えても、その線の犯人捜しは現実的ではないようだ。
一方、日本での世論を見ても、10代、20代という若い日本人女性ふたりが犠牲となったことはもちろん、01年の「明石市花火大会歩道橋事故」の記憶が重なったこともあり、文字通り他人事ではない強い関心事となっている。