新型コロナ禍に対する経済対策として、地域ごとに旅行代金を補助する観光支援策「県民割」が始まっている。テレビでは「高級ホテルに安く宿泊できる」と喜ぶ女子の笑顔を映しているが、回り回ればこれも税金だ。
コロナ関連で「大手旅行業者は焼け太りしている」という声は強い。政府は6月22日に公示された参院選に向けて6月15日、「県民割」の拡大を発表したが、本当に困っている人に税金がいかない施策は、有権者から厳しい鉄槌を食らう可能性が高い。
大手旅行会社の近々の決算状況を調べると、JTBの2022年3月期の売上高は前年比56.5%増の5823億2300万円。日本旅行は2021年12月期で前年比12.2%増の1080億8400万円。近畿日本ツーリストなどのKNT-CTホールディングスは2022年3月期の売上前年比59.2%増の1399億5700万円。東武トップツアーズは2021年12月期で取扱高前年比94.6%増の813億3400万円となっている。
KNT-CTホールディングスは2022年3月期決算の短信で「新型コロナウイルスのPCR検査やワクチン接種の受付業務、その他を全国各地の自治体から受注いたしました」と記しているが、政府はコロナ予防接種の会場運営などの事業を大手旅行業者に発注していたのだ。
また「GoToトラベル」事業に関し、政府は大手旅行業者が参加する団体に事業運営を委託。事務を担う各都道府県の事務局にも、大手旅行代理店の社員が出向していた。この際の1人当たりの日当について、観光庁は2020年の野党の合同国対ヒアリングで「最多価格帯は4万600円」と答えている。
「GoToトラベル」の事業委託費をもらい、その期間に旅行を申し込んだ人からの手数料で儲け、事務局運営の日当は4万円。予防接種事業でも稼いだ。「安く旅行ができてラッキー」と思っている国民の笑顔の裏で、こんなウハウハな構造があったのだ。
物価高がヒタヒタと押し寄せる中、税金が不公正に使われていることを黙認する参院選候補者がいたら即刻、落選させた方がいい。
(健田ミナミ)