12月を間近に、ウクライナではいよいよ寒さが本格化している。そんな状況下で、ロシア軍によるエネルギー施設に対する攻撃が日に日に激化。ウクライナの住民はいま、「最悪の冬」を迎えようとしている。
「10月中旬から1カ月以上続いたロシアの攻撃で、ウクライナでは発電所の約半分破壊され、電力の供給が大幅にダウンしています。ゼレンスキー大統領はテレビ演説で『1000万人が暗闇の中で暮らしている』と語っていますが、これから極寒の真冬を迎え、事態はいよいよ深刻になってきます」(全国紙記者)
23日、国連安保理の緊急会合にオンラインで出席したゼレンスキー氏は、「今日1日だけでエネルギー施設に約70発のミサイル攻撃」があり、ウクライナ全土で停電していることを報告。「ロシアによるエネルギーテロだ」と糾弾して、安保理が非難決議を採択するよう求めた。
全国紙記者が続ける。
「アメリカの国連大使は『ウクライナを凍らせて服従させようとしている。最大の被害者は子供や高齢者だ』と、ロシアを痛烈に非難。各国からも、攻撃の即時停止を求める声が上がりましたが、ロシアの国連大使は『ターゲットは軍事施設のインフラだけだ』との主張を繰り返し、西側からの武器供与への対抗策という持論を貫くのみ。ウクライナの一部地方では真冬になると摂氏20度を下回る場所もあり、そんな環境下で電気、水道、ガス供給が止まり、暖房やボイラーも使えず、温かい食べ物さえ食べられなければ、数万人規模の凍死者が出てもおかしくない。ただでさえ住む家を失っている人も多いですからね」
世界保健機関(WHO)は21日、医療インフラへの攻撃も703件報告されていると伝え、エネルギーの使えない今年の冬だけでも海外に避難するよう勧告しているが、戦火の激しい今の状況ではそれもままならないだろう。
「実は11月初頭、米国はウクライナに和平交渉を促し、18日にはローマ教皇フランシスコも和平交渉のための仲裁に乗り出す意向を示しました。さらに、23日にアルメニアで開かれた旧ソ連6カ国でつくるロシア主導の軍事同盟『集団安全保障条約機構』(CSTO)の首脳会議では、あのベラルーシのルカシェンコ大統領でさえ『停戦交渉を始めるべきだ』と提言。アルメニアのパシニャン首相などは、ロシアの姿勢にあからさまに不満を示し、共同宣言への署名を拒否したほど。それでも、現在のプーチンに停戦する意思がないことは明らかで、一方のウクライナもロ軍の完全撤退がないまま和平交渉することはありえないという立場を貫いており、休戦の機運さえ見えない状況です。出口が見つからないまま、本格的な厳しい冬に突入していくことは間違いないでしょう」(国際ジャーナリスト)
しわ寄せを一身に受ける形になったウクライナ国民にとって、とてつもなく厳しい試練となる冬は、もうそこまで来ている。
(灯倫太郎)