10月21日から5回目接種、そして24日からは生後半年以上の乳幼児の「努力義務」も始まった、新型コロナワクチン。第8波とインフルエンザの同時流行を警戒して、厚労省は「新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンに限っては、同時接種可能」の新ルールを作るなど、かなり前のめりだ。
だが、ワクチン接種で気を付けなくてはならないことがある。接種後の「水疱瘡または帯状疱疹の発症」だ。
筆者が寝返り、歩行も困難になるほどの「痛み」に突如として襲われたのは、今月初めだった。
鎮痛剤の座薬を入れないと眠れないほどの激痛が左半身に走り、足に力が入らない。左足を引きずりながら整形外科を3軒ハシゴしたが、全て「座骨神経痛ですね」と言われ、湿布薬と鎮痛剤を処方されるだけ。自分の身にいったい何が起きたのかわからず、戸惑っていたところ、激痛から1週間ほど遅れて、腰に直径2センチほどの水膨れができた。ようやくついた診断名は「帯状疱疹」。
思い当たることがあった。激痛で起き上がれなくなった3日前に、オミクロン株ワクチンを打っていたからだ。
今年4月にドイツのライプチヒ大学、アメリカのバージニア大学など欧米の医師の共同研究で、患者109万人を追跡調査をしたところ、新型コロナワクチンを接種した人は、接種していない人に比べて、帯状疱疹を発症するリスクが1.8倍も高かったことがわかった。「新型コロナワクチン接種後に体内の水疱瘡・帯状疱疹ウイルスが再活性化して、帯状疱疹を引き起こすことがある」のだという。
論文によると、新型コロナワクチンを接種後、体内のリンパ球の一部が一時的に作用しなくなる。リンパ球の動きが止まる間隙を縫って、子供の頃に水疱瘡感染後、神経に潜んでいる水疱瘡・帯状疱疹ウイルスが暴れ出す、と推測されている。
それでもワクチン接種のメリットの方が、帯状疱疹を発症しやすくなるデメリットを上回ると、論文は締めくくられている。
この論文は、日ごろ帯状疱疹を診察している日本国内の皮膚科医たちの間でもバズッた。「コロナ感染やワクチン接種後に帯状疱疹になる人、多いよね」というのはこの3年間、医療現場でよく言われてきたからだ。帯状疱疹による神経障害は、問診と全身の診察、そして水泡の一部をとって試薬を垂らし顕微鏡で見れば、その場で診断がつく。
誤解しないでほしいが、「恐ろしい」のは新型コロナワクチンではない。日本の医師がヤブだらけ、という現実だ。
信頼できる論文が出て、半年が経つ。その間、皮膚科医を除く開業医たちはロクに問診、視診、検査もせず「コロナ後遺症」や「ワクチン副作用」と騒ぎたて、いたずらに我々の不安を煽ってきた。都内小児科医は憤懣やるかたない様子で、
「帯状疱疹だけでなく、適切な診察と検査をすれば小児喘息や慢性呼吸器疾患と診断がつくのに、『後遺症外来』を名乗る医療機関で、コロナの後遺症だから様子を見ましょう、とだけ言われて小児喘息が見落とされ、放置された危険な誤診もある。ロクに診察もせず、安易にコロナ感染とコロナワクチンの後遺症扱いにしたがる風潮は危険です」
過去に騒がれた「子宮頸がんワクチン」接種後に若い女性が全身の激痛を訴え、歩行困難になった事例にも、もしかすると新型コロナワクチン接種と同じように、体内の水疱瘡・帯状疱疹ウイルスが暴れる副反応が起きていたのでは、との疑念を抱く。
痛みを訴える少女たちに対し、日本の産婦人科医、感染症科医は血液検査も丁寧な診察をすることもなく「ヒステリー扱い」し、政治家も見過ごしてきた。そんな偏見と怠惰に満ちた日本の医療現場から、新発見や特効薬が生まれるわけがない。
新型コロナワクチンの副反応が心配な人、特に50歳以上で持病がある人は、主治医に血液検査や、公費助成を活用した帯状疱疹ワクチン接種の相談をお勧めしたい。子供たちにも新型コロナワクチン接種と併せ、水疱瘡・帯状疱疹ワクチンの任意の2回目追加接種を、前向きに検討してほしい。
そして接種前日には、十分な休息睡眠を。激痛で悶絶した実体験から助言しておく。
(那須優子/医療ジャーナリスト)