芸能

「トラック野郎」の奇才・鈴木則文監督が愛した女優たち(1)あべ静江が語る鈴木監督の人物像

20140612f

 笑い、義理人情、下ネタ、お色気、そしてアクション──あらゆる要素を内包し、シリーズ10作を数えた大ヒット映画「トラック野郎」。歴史に残る名作を生んだ娯楽映画の奇才・鈴木則文監督とはいかなる人物だったのか。監督が愛し、スクリーンを彩った女優が、ヒットメーカーの知られざる姿を追悼激白する。

 死因は脳室内出血。5月15日に80歳で他界した鈴木則文(のりぶみ)監督の葬儀では、出棺時に「一番星ブルース」が流された。菅原文太、愛川欽也のコンビで一世を風靡した、あの「トラック野郎」シリーズの主題歌だった──。

 1975年8月31日に封切られた第一作「トラック野郎 ご意見無用」が大ヒットを記録。すぐさま正月公開作品として製作されたのが「トラック野郎 爆走一番星」だった。

 その二代目マドンナに抜擢されたのは、当時、清楚な美人歌手として人気を博していたあべ静江(62)。太宰治を愛読する女子大生役だった。義兄との許されざる恋に悩む一方で、星桃太郎(菅原文太)に一目ぼれされることになる。

「当時は音楽番組がたくさんあったし、『平凡』や『明星』といった芸能誌にも出ていたので本当に忙しかった。なので、この作品にはコマ切れで撮影に参加していました。映画出演は初めてでしたが、演技は子役時代からしていたので戸惑いはありませんでしたね。ただ、当時の東映はヤクザ映画全盛期。撮影所全体がそんな雰囲気で覆われていて、ものすごい迫力のある人たちばかりで、圧迫感というか、威圧感が凄かったです」

 男臭い環境に放り込まれた彼女の目に、監督はどう映ったのか。

「でも鈴木監督はそのカラーとは違っていましたね。監督の中に文学青年だった匂いを感じることができました。私は寺山修司さんが好きだったんですが、監督は寺山さんと同じような、もっさりしたしゃべり方。言葉少なめで、どちらかというと、動より静の印象が強かった。ただ、ケンカのシーンなどは一気にいく。そういうパワフルな面も持ち合わせていましたね」

 事実、鈴木監督は映画界屈指の読書家として知られたのだが、あべ自身が文学少女だったことも、監督の「内包された部分」を見る要因となったようだ。

「私は小・中学校時代はSF小説、とりわけ(アメリカSF作家の)ブラッドベリが好きでした。高校生になると芥川龍之介を読んで、短大では児童文学に親しみました。というわけで、太宰治よりも芥川龍之介党なんですが」

 監督の演出について、あべは次のように回想した。

「ダメ出しとかほとんどなかったですね。ハンカチを出す時の手の位置を注意されたぐらい。高さも決まっていたりして。監督から言われたのは立ち位置と動き、セリフのテンポですね。テンポで性格や役柄が決まってくると言われました。私のシーンはアップが多くて、ほとんど切り返しで撮っていた。今思い出しても、わりとのんきに淡々と演じていましたよ。衣装なんかも監督に了解を取りながら、自前のものを使用していましたし。衣装部が用意したのを着たのは、最後の山登りに向かうところだけでしたね」

◆アサヒ芸能6/3発売(6/12号)より

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
エスコンフィールドに「駐車場確保が無理すぎる」新たな問題発覚!試合以外のイベントでも恨み節
3
【高校野球】全国制覇直後に解任された習志野高校監督の「口の悪さ」/スポーツ界を揺るがせた「あの大問題発言」
4
これも「ラヴィット!」効果…TBS田村真子アナ「中日×巨人で始球式」に続く「次に登板するアナウンサー」
5
日本人に大打撃!タイ政府「外国人締め出し」で長期滞在とビザ取得が困難に…そして口座凍結まで