芸能

「トラック野郎」の奇才・鈴木則文監督が愛した女優たち(3)夏樹陽子が語る撮影秘話

20140612h

「トラック野郎」シリーズを彩った女優の一人に、夏樹陽子(61)がいる。片平なぎさがマドンナの第5作目「トラック野郎 度胸一番星」(77年)で、女渡り鳥・マヤ役を好演。まだ映画出演3本目の新人女優だったが、一気に映画ファンに注目される存在となった。

「あれは本当に印象に残っている映画で、八代亜紀さんも初めて女トラック野郎役として出た作品なんです。そんなこともあって、今でも八代さんと会うと、その時の話が出るんですよ。私が(愛人役の)千葉真一さんを介抱しているシーンで、ちょうど八代さんの『恋歌』が挿入歌として流れるんです。それがすごく印象的で。そんなわけで、作品が出来上がった時には私もすっかりトラック野郎気分でしたね。今はデコトラなんてめったに見ないですよね。たまに出会うとうれしくなって、自分が乗っている車のクラクションを鳴らして手を振っちゃう。コンニチハ、って(笑)」

 彼女にとっては、ファッションモデルから女優に転身してそれほどたっていない頃の作品だった。

「参ったのはメイクですね。とんでもなくバタ臭くって(笑)。時代の先端を行くファッションの世界では洗練されたメイクをしていたから、その違いにビックリしてしまいました。その時は、とんでもない世界に入ってしまったと思いましたね」

 もちろん、監督とはこの時が初対面。だが監督然とした風情はなく、驚くほどに気さくだったという。

「『お、一緒にやろうな』って、私の肩を触りながら気軽に声をかけてくれて。スタッフに対してもそうでした。私は会うといつも『監督、お風呂に入ったの?』って聞いてましたね。ざんばら髪で、肩にフケをためているのを手で払ってあげてたんです(笑)。身の回りのことなんか気にしない人。で、日焼けか酒焼けかわからないような赤い顔で台本と赤ペンを持って、いつもニコニコしていました。私にとっては母性本能をくすぐるステキなオジサンさんだったかな。どなられたり怒られたりしたことは一度もなかったですね。『なっちゃんね、ここはこうで、こうして、思いっ切りやって』って、優しく演技指導してくれました」

 監督という立場でありながら、女優が気安く声をかけることができる、愛すべき存在だった。

「女性を撮るのがうまい人だったと思います。監督は物事をその時の空気感で捉えて演出していくタイプ。理屈っぽい面はなかったですね。もちろん、ポイントでは思い切って当たっていきますよ。そういうアグレッシブなところもあったから、『トラック野郎』にはピッタリだったんでしょうね」

 自然かつ巧みな女優の扱いが、名作を生んだのだ。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
暴投王・藤浪晋太郎「もうメジャーも日本も難しい」窮地で「バウアーのようにメキシコへ行け」
4
侍ジャパン「プレミア12」で際立った広島・坂倉将吾とロッテ・佐藤都志也「決定的な捕手力の差」
5
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き