テリー 「三浦しをん」というのは、本名なんですね。
三浦 はい。生まれた時に庭で咲いていた「シオン」という花の名前から来ています。
テリー 女優さんみたいで、すごくきれいなお名前ですよね。そもそも小説家になろうと思ったのは? 子供の頃から文章を書くのが好きだったんですか。
三浦 いえ、まったく。読むのは好きだったんですが。日本の小説が多かったです。漫画も大好きです。
テリー じゃあ、大学で早稲田の第一文学部に進んで、その頃から小説家になろうと意識したとか。
三浦 大学生の時は映画が撮りたくて、映画サークルに入ったんです。でも「自分にはあまり協調性がないな」と思いまして。映画って、基本的にいろんな人と協力して撮らなきゃいけないじゃないですか。
テリー いや、平気ですよ。監督が「こうやりたい!」って言えば、みんながやってくれますから。
三浦 そういう人望がないから、ダメなんです(笑)。
テリー そんなことないでしょう。じゃあその時、方向を変えて小説を書きだしたんですか。
三浦 それが、まだ。就職の時期になって、本が好きなので出版社に入りたいと思ったんですけど、どこも受からなくて、就職活動に失敗したんです。
テリー そうだったんだ。
三浦 だから卒業後はフリーターをやっていました。その時に、試験に落ちた中の一つ、早川書房の編集の方が、私が入社試験で書いた作文を読んで「あなたは文章がおもしろいから、小説を書いてみたらどうですか」と言ってくださったんですね。
テリー その編集さんもすごいね。そう言われて、実際はどうしたの?
三浦 気にせず、古本屋でバイトをしていました。「書きなさい」と言われても、どう書いていいかわからなかったので。でも、しつこく、しつこく言ってきてくれたんですよ。
テリー 本当にエラいね。男性の編集さん?
三浦 はい。
テリー それ、三浦さんのことを口説こうと思ってたんじゃないの?
三浦 いえ、そういう人じゃないです(笑)。そのうち、私があまりにも書かないから「じゃあ、就職試験を題材に書けばいい。どこもかしこも落ちたことを形にしなかったら、あんたは落ち損だ!」と言われて。でも、私を落としたのはその人でもあるわけで‥‥。
テリー 「おめえだよ!」って(笑)。
三浦 そのセリフが喉元まで出たんですが(笑)、「はい」と言って、それで書いたのが、00年のデビュー作(「格闘する者に○」)です。
テリー その方は、眼力があったんだねぇ。
三浦 いやあ、ただの思い込みが激しい人です(笑)。
テリー でもそれから、6年後の「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞を受賞されて。29歳の時ですね。
三浦 私は新人賞をいただいてデビューしたわけではなかったので、賞というものとはずっと無縁なんだろうと思っていたので、すごくうれしかったですね。