不貞がばれた場合、何とか言い逃れしようとウソをつき、結果、ボロが出てさらにひんしゅくを買う、というパターンは世の常だ。ところが、「まあ、ヤッちゃったのはしょうがないけど、相手が悪かったよなあ」と、世間の同情を買うことになったのが、92年4月に発覚した、古谷一行と艶系女優Aとの「京都の一夜」を巡る騒動だった。
コトの起こりは、前年の6月。当時「金田一耕助」役などで人気を博していた古谷は、テレビ朝日系の土曜劇場「混浴露天風呂連続殺人」出演のため、北海道ロケに参加。ロケを終え東京に戻る千歳空港で、Aに電話番号を聞いたことがきっかけとなり、1カ月後に東京で再会。その際は、別れ際に「車中でチュッ、としただけ」だったそうだが、9月25日に2人は、京都のホテルで「熱い夜」を過ごすことになる。
ところがそれから1年後に突然、写真誌「FOCUS」(4月24日発売)に、彼女の告白記事が掲載されてしまったのだ。
そこには、《前戯がうまいんです。『どこが感じるの』と聞くので…(中略)…もう、こんなにしてくれて、疲れないか、こっちが心配になるくらい》などと、まるで官能小説ような秘め事の中身が赤裸々に語られたのだった。
しかも、話はそれだけでは終わらなかった。Aは同誌発売日に、東京・赤坂で一律5万円の有料記者会見を開いたのだ。会見場には新聞、雑誌、テレビを合わせて12社が集結。白いスーツ姿で現れたAは、緊張した面持ちで、
「その瞬間、私たちは確認しあって、(中略)素敵だ、キレイだ、好きだよと言ってくれました」
と書かれたメモを読み上げ、報道陣を唖然とさせたのである。とはいえ、5万円も払っている報道陣が、用意したメモの内容だけで納得するわけもなく、「なんで1年もたって告白したんですか」「奥さんに悪いと思わないんですか」「売名行為でしょ」と、矢継ぎ早に厳しい質問が飛ぶ。すると言葉に詰まって泣き出したAは、
「事務所から仕事だといわれて。テレビに出たいという気持ちはありました。売名行為と言われても仕方がありません」とポロリ。慌てた女性社長が「ひどいじゃないですか!」と、報道陣にクレームを入れるひと幕もあった。
結果、会見は1時間きっかりで終了。後日請求書が各社に郵送されることになったのだが、秘め事を暴露された古谷は、
「関係を持った事実には後悔していませんが、表ざたになったということには後悔しています。自分を戒めないといけない。そりゃ、困ってます」
と反省しきり。結果、不貞を隠すことなく素直に認めた古谷に対し、A側の対応のマズさが引き立った形となった。
不貞がばれてなお、世間から同情の声が噴出するという、不思議な顛末となったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。