軍拡の道をひた走る中国。その軍事的威力を背景に、領土拡大までもくろむ“身勝手な隣人”を放置しておくわけにはいかない。安倍政権は「集団的自衛権行使」を可能にする憲法解釈の変更を決めた。「抑止力」の増強をしたというが、それも実力が伴わなければ意味がない。そこで、自衛隊と人民解放軍の「決戦」を徹底シミュレーションした!
〈20××年×月×日、中国の台湾侵攻で、台湾海峡付近で作戦展開していた米艦隊を防護中だった海上自衛隊が人民解放軍からの攻撃を受けて応戦。一時、交戦状態となった。政府は緊急記者会見を開き、「憲法で認められた集団的自衛権行使の範囲内での最小限の反撃であった」と国民の理解を求めた〉
こんなニュースが流れる日も、そう遠くないのかもしれない──。
7月1日、安倍内閣は臨時閣議を開き、憲法解釈の変更を決定した。閣議決定した文書には新たな武力行使の3要件が記され、集団的自衛権の行使が認められることとなったのだ。
ところが、閣議後の記者会見で安倍晋三総理(59)は慎重な言葉を繰り返した。
「平和国家としての日本の歩みは、これからも決して変わりません。むしろ、その歩みを、さらに力強いものとする。そのための決断こそが、今回の閣議決定であります」
このセリフが意味するところは、あくまで集団的自衛権の行使は必要最小限度の限定的なものであるということだ。現に、事前に行われていた与党協議で、政府は集団的自衛権行使の可能性がある8事例を示している。それは自衛隊が米艦を防護する4事例、強制的な停船検査、米国に向かうミサイルの迎撃、海上交通路の機雷掃海活動、民間船舶の国際共同防衛である。
ここまで限定したのも無理はない。これまで、歴代内閣は憲法9条に関する内閣法制局の解釈により集団的自衛権の「権利は有するが行使はできない」という立場を守ってきた。正反対の憲法解釈に乗り出すのだから慎重にもなる。
しかし、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう話すのだ。
「自衛隊法などの関連法案の改正後でなければ具体的なことはわかりませんが、恐らく8事例にあるような後方支援的な場面に自衛隊が派遣されるでしょう。政府の意図としては、戦争をしに行くわけではないというところを見せたいのでしょうが、いかなる後方支援も相手国にしてみれば敵対行為であり、行き着く先は戦闘なのです」
そして、今回の閣議決定で安倍総理は「抑止力が高まる」ということを口にしている。どこの国に対しての抑止力かは明らかだ。それは、バブル景気を背景に国防費が増え続けている中国である。最近でも南シナ海の島々の領有権を巡りベトナムと対立。我が国固有の領土である尖閣諸島を巡っても、挑発的な行動を繰り返している。
実際に、今回の閣議決定に公然と反対を表明した諸外国は中国政府ぐらいである。中国側も日本の“仮想敵国”となっていることは理解しているのだろう。
日本が集団的自衛権を中国に対して行使するのは、台湾で有事が起きた場合ではないだろうか。