小高恵美の恵美は「えみ」ではなく「めぐみ」と読む。叔父は俳優・小高雄二、叔母は女優・清水まゆみ。87年、第2回「東宝シンデレラオーディション」でグランプリに選ばれて芸能界入り。第1回優勝の沢口靖子が主演を務めた同名の東宝映画「竹取物語」でいきなり盲目の少女という難しい役を演じ、スクリーンデビューを飾っている。
歌手デビューは翌88年3月のシングル「早春の駅」(ポニーキャニオン)。許瑛子・作詞、都志見隆・作曲という、オリコン1位に輝いた中森明菜の「SAND BEIGE -砂漠へ-」コンビ起用に、所属事務所の彼女に対する大きな期待感が現れていた。
とはいえ、キャッチフレーズの「野に咲く歌声」が表すように、透き通る声ではあるが線が細く、音程はやや不安定。しかしながら、この曲を挿入歌にした彼女の初主演ドラマ「花のあすか組!」(フジテレビ系)の放送が88年4月から始まると、人気に火がつくことになる。
原作は、80年代半ばから「月刊ASUKA」に連載されていた高口里純の漫画。孤高の少女・九楽あすかと、都内の不良女子中学生を束ねる組織「全中裏」との抗争を描いたものだ。
中学1年でイジメに遭い、自死未遂。半年間の入院後、髪を切り、夜の街を徘徊し始め…という第1話では、実際にハサミで自分の髪を切り、ボーイッシュなショートカットがトレードマークになった。さらに劇中で、あすかが放つ「風に逆らうほどバカじゃない。風に流されるほどヤワじゃない」などのセリフが「あすか語録」と呼ばれ、中学生に支持されたものである。
さて、そんな「あすか組」名義で88年8月に発売されたのが、主題歌の「悲しげだね」。この曲は、あすか扮する小高、堂本ミコ役の小沢なつき、香月はるみ役の石田ひかりによるユニットだった。ソロパートはなんとかこなしているものの。コーラスワークはほぼゼロ。しかし、重なり合う3人の声には、切なくなるような初々しさがある。
その後、小高は女優として、89年の映画「ゴジラVSビオランテ」から、95年の「ゴジラVSデストロイア」まで、実に6作品にわたり、超能力少女「三枝未希」を演じ、平成ゴジラシリーズになくてはならない存在となった。
しかし00年、大阪松竹座で上演された「火の鳥」出演を、体調不良を理由に辞退。その後、女優業を引退し、脚本家・演出家の宇賀神明広氏と結婚後は、同氏が主宰する演劇ユニットに役者、演出助手として参加した。
そして今年11月、デビュー35周年を記念して「小高恵美アニバーサリープロジェクト」を始動させた彼女は、東京・池袋HUMAXシネマズで「小高恵美記念祭」を開催。往年の80年代ファンを歓喜させたのだった。
(大石怜太)