日照時間が短いこの時期は「冬うつ」に注意したい。
これは、秋から冬にかけて「気分が落ち込む」といったうつ症状を発症し、春や夏になると回復する季節性うつ病のひとつ。医学的には「季節性情動障害」と呼ばれる。
冬場は十分に日の光を浴びる時間が減るため、脳内の神経伝達物質のひとつ、セロトニンの分泌が減少する。そのため、セロトニンを原料としている体内時計をつかさどるホルモン・メラトニンの分泌がアンバランスになってしまうため発症するのだ。このメカニズムは解明されていない部分も多く残されている。
「冬うつ」の主な症状は、「気分が落ち込む」「集中力が落ちる」「ひどくイライラしたり不安になったりする」「物事を楽しめなくなる」「人と会いたくなくなる」。
一般的な「うつ病」と似ているが、その違いは「過眠」と「過食」だ。うつ病は「眠れない」「食べられない」といった症状が現れるが、「冬うつ」の場合は「寝ても眠い」「炭水化物や甘い物が異様に欲しくなる」症状が出やすい。
最も重要な予防法は太陽の光を浴びること。寒い冬は外出も億劫になりがちだが、窓辺で日光を浴びるだけでも十分有効だ。
タンパク質の積極的な摂取もオススメする。肉や魚、大豆製品などに多く含まれるタンパク質は、セロトニンを作る原料となる。特にイワシやサバなど青魚の脂にはセロトニンを活性化させる作用があるため、意識的に摂取することが望ましい。
寝溜めをしないことも重要だ。休日などに寝溜めをすると体内リズムが崩れて心身に不調を来たしてしまうからだ。起床時間を決めて規則正しい生活を心がけよう。
「冬うつ」の症状を発症したら、一人で抱え込まずに、心療内科やメンタルクリニックなど医療機関に相談するといいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。