40代の現役隊員は、受験でも自衛隊ブランドの恩恵を受けたと話す。
「東日本大震災で自衛隊の活動が取り上げられて以降、自衛隊のイメージが一変。世間の見る目が変わりました。娘が私立の小学校を受験した時も、『自衛隊で働いています』と親子面接で自己紹介すると、先生からほめられたばかりか、無事に入学できました。他の児童の父兄は一流企業勤務が多いので、『自衛隊』というブランドの影響があったと思います」
そして、独身の国防男子には“嫁取り”という重要な作戦でも、その威力を遺憾なく発揮しているという。
「民間企業に勤める年収1000万円のサラリーマンを集めたイベントよりも、自衛隊員の婚活パーティのほうが女性参加者はすぐに埋まります。命の危険と隣り合わせの職業ですが、倒産することがないし、外見もたくましいので、女性は安心するようです」(イベント会社の女性)
だがライフプランを考えるうえでは、欠点がないわけではない。民間企業は60歳定年が主流の中、いささか早い定年が自衛隊員の悩みの一つだという。潮氏が解説する。
「上の階級を目指して偉くなるには、仕事の成績を測る数字がないので、仕事の評判や自分の上司、同僚、部下からどれだけ信頼されているのかで、出世は左右されます。人望がなくて出世レースに敗れると、53歳で定年退職を迎える場合もあります」
とはいえ、お国のために身も心もささげてきた実績は、再就職でも有利に働くケースが少なくない。
「定年退職が決まると、次の仕事が見つかるまで再就職先を斡旋してくれます。就職先には軍事関連会社の三菱重工業やNEC、東芝などの大手企業のほか、最近では銀行の警備員の仕事など幅広い。企業の顧問になって月1回の出勤で、現役より稼いでいるOBもいますよ」(自衛隊OB)
しかも、金銭的なサポート態勢も万全だ。
「意外と知られていませんが、『若年定年退職者給付金』として定年退職した自衛官に給付金が支給されています。再就職先の給料と合わせてもらえて、退職した時と大きく年収が下がらない仕組みになっています」(潮氏)
これだけ、待遇面では「専守防衛」でウハウハの自衛隊員。お国のために命をかけた代償としては、決して高くはないが、集団的自衛権が容認されれば、ますますその役割が大きくなるに違いない。