その中国人民解放軍(中国軍)は、陸軍は160万人、海軍が保有する艦艇は1088隻、空軍の作戦機が2074機と、いずれも規模だけで言えば自衛隊をはるかに凌駕し、世界トップレベルである。
しかし、以前から兵器の「質」の面で遅れが指摘されており、昨今では潤沢な軍事費で兵器の近代化を急ピッチで進めているのだ。
例えば、海軍は艦艇数を急激に増やし、外洋進出を強めている。「051C型駆逐艦」(旅州型)や「052C型駆逐艦」(旅洋II型)は、中国版イージス艦と呼ばれ、ハイテクシステムを使用した最新型防空艦である。
また、潜水艦も自衛隊にはない原子力潜水艦を保有し、その数もはるかに多い。最近では配備を増やしているロシア製の「キロ級潜水艦」は静粛性が高く、潜行すると、発見しにくい存在となっている。
さらに、空軍においても11年にステルス戦闘機「J-20」の試験飛行に成功したとして世界を驚かせた。
しかし、軍事評論家の井上和彦氏はこう話すのだ。
「総じて、自動車大国が軍事大国であることからもわかるように、軍事技術にはシステム・インテグレーションが必要です。つまり、エンジンを作り出すだけでなく、それを自動車としてまとめ上げることができなければ意味がない。では、中国にそうした基礎的な技術があるかというと、存在しません。いろんな兵器をたくさん作れば、千のうち三つぐらいは成功する兵器があるかもしれないというレベルです」
現に、中国海軍が誇る空母「遼寧(りょうねい)」は、ウクライナからスクラップ寸前の空母「ワリャーグ」を購入して再生させたものだ。艦載機を離陸させるためのカタパルトもなければ、着艦させる際に使用するワイヤの購入をロシアから断られている。何とかブラジルから手に入れるメドをつけたとされるが、現状では実戦配備で役に立つのか怪しいのだ。
前出の中国産ステルス機も同様のようで、軍事評論家の古是三春氏がこんな指摘をする。
「『J-20』のステルス性能ばかりを注目していますが、外観から見るかぎりジェットエンジンの吸気口であるインテークが小さく、エンジンの出力は低いと思われます。エンジンの噴流を変えるノズルもなく、機動性にも問題があるでしょう。端的に言えば、なんちゃってステルスです」
空自が導入する「F-35」の性能は未知数な部分も多いが、少なくとも中国産ステルス機よりは勝っていることは間違いないだろう。
また、日本では国産ステルス戦闘機「心神」の開発も進んでいるという。
「『心神』の開発はカウンターステルスの技術向上という目的もあるのです。簡単に言えば、ステルス機をレーダーで発見する技術です。中国のステルス機なんて、レーダーで見えたとしても、『見えなかった』と言っておけばいいのです」(井上氏)
急速な近代化は中国軍のゆがみを大きくし、逆にますます「オンボロ軍隊」にしてしまっているのだ。