それだけではない。本給もさることながら、自衛隊では勤務地や勤務内容、実施活動によって、特別手当が複数用意されている。これが、貴重な収入源だというのだ。
「東日本大震災の時には、福島第一原発事故対応に当たった隊員の手当を増額。それまでの原子力災害派遣手当は日額3240円でしたが、危険を伴う作業のため、4万2000円まで引き上げられた。また、この時は遺体埋葬のための搬送や、遺体安置所での身元確認に携わった場合には、日額1000円も支給されていました」(社会部記者)
災害派遣などは特殊なケースだが、その他にも自衛隊ならではという手当が用意されている。
「例えば、爆弾を処理する際の『不発弾処理手当』は日額5200円。南極地域への輸送業務を行う『南極手当』は4100円。落下傘での危険な作業には1回ごとに『落下傘降下作業手当』が6650円支払われている。ただ、こうした手当は、危険と隣り合わせなので、金額だけでウハウハとは言えないですよ」(自衛隊OB)
さらには、公務員ならではの“福利厚生”も充実している。
「入隊後、基地や駐屯地の営内に住むキャリア組以外の自衛隊員は、食事、水道光熱費、家賃は全て無料。衣服や寝具なども支給されています。営内でお金を使うのは、PX(売店)で飲み物とか、雑誌を買うくらい。病気になっても営内では診察や治療も無料なので、生活費は1万円あれば十分ですね」(陸上自衛隊員)
そのため、給与はほぼ全額趣味や貯金に使い回せる。自衛隊員の気になる金の使いみちについて、潮氏がこう説明する。
「貯金目的で入隊しても、訓練のストレスで、散財してしまう隊員はけっこういます。若い隊員の多くは、まず車かバイクを購入。車ならスポーツカーが人気で、改造費用にも毎月お金をつぎ込んでいるから、いつまでも貯金できない。防衛大学を卒業したキャリア組が小隊長として基地に赴任すると、自分の部下のほうがいい車に乗っていますね」
駐屯地の周辺には、自衛隊員をあてにした飲み屋やスナックなども少なくない。地元経済にとっても、「自衛隊マネー」は、ありがたい存在だ。潮氏が続ける。
「飲み屋ではツケ払いで飲むのは当たり前。どの隊がどこのスナックに行くのかも暗黙で決まっていたりします。都内のキャバレーには、身分証明証を提示すると自衛隊員は2割安くなるという“特別優良店”があって、わざわざ聞きつけた隊員が訪れるほど」
中には、飲み代やキャバクラにはまって、サラ金に手を出してしまうケースもあるという。
「ひどい場合には闇金に手を出してしまったケースもあるが、上官の指導で、会社(職場のこと)への取り立ての電話に対し、上官みずから『警察に通報する』と追い返したこともあった」
闇金業者も、自衛官の組織を前に一目散で退散したという。
一方、「堅実家にとっては、自衛隊は最高の職業」だと言うのは、20代後半の航空自衛隊員だ。
「高校卒業後に入隊して、5年間で1000万円ためました。同級生が大学卒業後に社会人になった時には、神奈川県内でマンションを購入していましたね」
40代前半の陸上自衛隊員も同意する。
「私の場合は、30歳の時に都内23区内に家を建てるため、銀行に相談しました。担当者からは『自衛隊の方なら問題ありません』と言われ、審査は緩くて、当時、年収400万円ぐらいだったのですが、10倍以上の住宅ローンを組んでくれたんです」
“自衛隊”という最強の信用があれば、銀行も貸し渋りなしというのが実情のようだ。