1月9日、アメリカの政策研究機関として名高いCSIS(戦略国際問題研究所)は、いわゆる「台湾有事」を想定した衝撃のシミュレーション結果を公にした。
机上演習は、中国軍が2026年に台湾への上陸作戦に踏み切った場合の、さまざまな条件下における合計24通りのケースを想定。このうち、最も可能性が高いとされるシナリオで実施された3回のシミュレーションでは、いずれも「中国の軍事作戦開始から3~4週間が経過しても、中国軍は台北などの主要都市を占拠できず、台湾南部の港を一時制圧するに留まる。その際、中国軍は揚陸艦のおよそ9割を失う」と結論づけられている。
ただしこの場合、当事者である台湾軍をはじめ、台湾有事に参戦する米軍や日本の自衛隊も、それ相当の損失を覚悟しなければならない。
事実、注目の報告書は「台湾軍からは約3500人の犠牲者が出る」「米軍は2隻の空母、168~372機の航空機、7~20隻の艦艇を失う」、そして「日本の自衛隊は90~161機の航空機、14~26隻の艦艇を失う」と予測しているのだ。
極東地域の軍事情勢に詳しい国際軍事アナリストが言う。
「報告書はまた、米軍や自衛隊が、予測された数の空母や航空機や艦艇を失った場合、要員の犠牲者数は日米合計で3500人以上に上ると指摘しています。さらに、グアムにある米軍基地のほか、日本国内の米軍基地、具体的には沖縄の嘉手納基地、山口の岩国基地、東京の横田基地、青森の三沢基地に対しても、中国軍によるミサイル攻撃が行われ、数万人規模の兵士が失われるとされている。まさに戦慄のシミュレーション結果です」
実は米軍や米シンクタンクが過去に実施したシミュレーションでは、米軍は中国軍に敗北ないしは大敗するとの予測が出ていた。その意味では今回の予測結果はかなりの前進と言えるが、
「それでも日米双方は、相当の損失と犠牲を被ることになるでしょう。いざという時、アメリカや日本がこれだけの損失や犠牲を払ってまで、台湾有事に介入する決断を下せるか否かの問題を含め、対応は予想以上に難しいと考えておかねばなりません」(前出・国際軍事アナリスト)
台湾有事は「今そこにあるリアルな危機」である。それだけに、中国に行動を起こさせないための方策も含め、軍事と外交の準備を怠ってはならないということだ。