田母神氏が続ける。
「我が国は防衛政策の転換時期に来ています。米国が日本を守ってくれるという幻想を捨てて、自分の国は自分で守る態勢の構築を進めてこそ、初めて国家は自立できるのです。現状、日本の戦闘機やミサイルシステムなどは米国の暗号や情報交換装置などをそのまま使用しており、自衛隊は米軍から自立できておりません。自衛隊が自立しなければ他の国家政策でも常に米国の意向を忖度するという状態が続き、経済的にも損を被ります。良好な日米関係を維持しながら我が国の自立を目指すべきだと思います」
今年初頭、日本政府は国内総生産(GDP)の1%としていた防衛費を「5年以内に2倍に増額する」と閣議決定した。NATOに加盟する30カ国はGDP比2%を求められており、NATO非加盟国である日本も右に倣えで国防予算を倍増し、防衛力の強化を図ることとなったが、
「戦闘機が1時間飛ぶと1機につきコストが200万円(部品代が170万円、燃料費が30万円)かかります。航空時間が50時間に達すると、多くの部品を交換せねばなりません。現状、自衛隊では200機の戦闘機のうち10%の20機は飛ばせません。なぜなら飛ばした戦闘機の部品交換に充てているからです。こんな状況が10年も続いたら自衛隊は稼働できなくなるでしょう。防衛費の倍増は当然の政策です。
米国は、日本の防衛費増は自国の高価な兵器を売るチャンスだと考えているでしょうが、自衛隊の防衛力整備が米国の意向優先で決められては無意味です。強い自衛隊が我が国に対する侵略を抑止するのです。戦後の我が国では軍事力強化は戦争をするためだと考える人も多いですが、それは国際標準ではない間違った考え方です。軍事力の強化は戦争をしないためにこそ必要なのです」
防衛費の増額は日本の経済にもプラスの効果をもたらすはず‥‥と思ったら見当違いだ。防衛予算はあくまで国内で調達すれば大規模な経済対策として機能するが、深刻なデフレ下では、「自国で生産した兵器を自国で買うべき」と、自立した自衛隊に向けて法整備も欠かせないと主張する。
「日本では軍事力の強化が戦争に繋がると考える人が多く、被爆国であるため核兵器アレルギーも強いですが、核兵器とは軍事力の均衡がなくとも抑止が成立する唯一の武器であり、北朝鮮がミサイル発射を続けるのもそのためです。
物理的な戦力強化とともに我が国の戦える態勢を築くために法的な体制整備が必要です。世界の軍は国際法=禁止規定で動きます。これに対し、自衛隊は国内法で根拠を与えられた根拠規定で動くのです。戦争に至るグレーゾーン事態などでは、自衛隊は何ができて何ができないのか敵国にも筒抜けです。これでは戦いには勝てず抑止力も低下することになります」
現状の日本の自衛隊はいわば丸腰の状態。その間隙を突かれれば、日本はウクライナの二の舞になる。田母神氏はこう憂慮するのだ。