「レスリング仕込みの強靭な足腰は、まさに二枚腰。その力強い相撲には、低身長のハンディキャップなど、全く感じられません」
角界OBが賛辞の声を送るのは、幕下力士の川副である。日本大学4年時に「全国学生相撲選手権大会」を制して学生横綱のタイトルを獲得。昨年の9月場所に幕下15枚目でデビューし、現在は幕下7枚目の番付だ。
そんな身長166センチ、体重110キロという小兵の十八番が炸裂したのは、今場所7日目だった。角界OBが続ける。
「179センチ、166キロの栃神山を相手に、土俵際で粘り強いうっちゃりを決めました。本来なら一緒に倒れてしまう場面ですが、相手の体の上にキレイに乗っかる身のこなしは見事でしたね」
関取への昇進は「待ったなし」のスター候補だが、意外なところに敵が潜んでいるというのだ。角界関係者が耳打ちする。
「母校の日本大学から出禁扱いのようです。というのも、大学サイドとしては木瀬部屋もしくは追手風部屋に入門させる目論見だったのに、宮城野親方(元横綱・白鵬)の熱心な誘いで、宮城野部屋に入門してしまった。プロ野球のようなドラフト制度がないため、入門する相撲部屋は各個人の自由意志で決めるのが基本。ただし、川副のようなトップ選手は、学校側の都合や思惑で入門先が決められることが常です。意にそぐわない選択で、日大はメンツを潰されてしまった。日大の理事長が交代したことで、関係性が修復されているといいのですが…」
関取となって土俵入りする際、川副の化粧まわしには「日本大学」の文字が刻まれていない可能性は大きいのではないか。スター候補の先行きが不安になってくる。