まさに独裁恐怖政治による言論封殺以外の何物でもないだろう。
ほかでもない、中国政府(国家新聞出版署当局)が今年11月から、本土メディアの記者や編集者らに対して強制実施することを決めた「新聞記者職業資格試験」である。
目的は習近平国家主席の指導思想の徹底を図るためとされ、指導思想には昨年10月の共産党大会で掲げられた習近平国家主席への服従を求めるスローガンなどが含まれる。さらに、試験に合格しても、5年ごとに再試験を受け直して再合格しなければならないほか、当局が毎年行う審査で不適格の烙印を押されれば、取材編集資格は剥奪されてしまうのだ。
これにはキャスターの辛坊治郎氏も、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」(1月12日放送)で、次のように大批判している。
「中国はひどい国です。こんなことをあからさまにやる。当然、試験には『中国共産党万歳』『習近平万歳』という思想性の問題が出題されることになるでしょう。しかも、受験する記者はスマホに政府指定のアプリをダウンロードしなければならず、スマホ内の全ての情報を政府に吸い取られ、過去に読んだ記事も把握されてしまいます」
だが、言論封殺は本土メディアにととまらず、なし崩し的に拡大されていく雲行きなのだ。習近平体制の内情に詳しい国際政治学者も、次のように指摘する。
「まずは既成事実を内外に示し、その後、コトをエスカレートさせていく、というのが習近平の手口。香港とマカオと台湾のメディアは今回の記者資格試験の対象外とされています。とはいえ、アメリカがニラみを利かせている台湾は別として、中国の特別行政区にあたる香港とマカオのメディアに対しても早晩、習近平が記者資格試験を課していくことは目に見えている。加えて、中国本土に取材拠点を置く海外のメディアに対しても、習近平体制に批判的な記事を報じた社や記者などへの制裁は、一段と露骨になっていくことでしょう」
批判を口にした者は必ず粛清して叩き潰す──。かくして21世紀の独裁者・習近平の「大ウソ」は全世界に垂れ流されていくことになるのだ。