ロシアのウクライナ侵攻の停戦調停をニラみ、中国の習主席主席とウクライナのゼレンスキー大統領の電撃電話会談が行われたのは4月26日だった。これにより、戦況はプーチン大統領の敗北へ大きく動き出している。防衛省関係者が、会談の裏をこう読み解く。
「慎重で謀略、策略に長けた習近平がウクライナ側と接触したのは、このままいけば最終的にロシアが追い詰められると確信したためだ」
その理由について、以下のように続けた。
「ロシアは核使用を匂わせ、欧米やウクライナを脅していたが、習近平はプーチンと3月に直接会った際、ロシアは核を使えないと判断した。仮にロシアが核を使えば、アメリカやNATOから百倍返しで反撃されることは間違いなく、そうなればロシアは消えてなくなり、戦争責任者は殲滅される。プーチンはその恐怖に耐えられないわけだ。もし核を使わないとなれば、結局は欧米支援のウクライナが戦力で上回ることになる。習近平はそうした状況を踏まえ、プーチンが敗北すると読んだ。ロシアがボロ負けする前に、メンツを保ったまま停戦させる方法を模索し、ゼレンスキーとの電話協議に応じたと考えられる」
習近平のもうひとつの思惑は、世界で最も影響力を持つ大国、中国のアピールにあった。この防衛省関係者が続ける。
「中国は3月、サウジアラビアとイランの国交正常化を電撃合意させて世界を驚かせ、イラン包囲網を狙っていた米バイデン大統領のメンツを完全に潰した。さらに習近平がウクライナとロシアを停戦に持ち込めば、いよいよ中国がパワーバランスでアメリカを上回ることになる」
一方、ウクライナ側はどうか。軍事アナリストが言う。
「中国を調停の舞台に引きずり出せば、中国からロシアへの武器供与が一時的であれストップできると、ゼレンスキー氏は読んでいます。もし調停に失敗しても、その間にNATO加盟国からの供与で揃った軍備を整え、一気に攻勢をかけてロシアを敗北に追い込むハラでしょう」
仮にプーチンが停戦を選ぼうが、このまま突き進もうが、どう転がっても待ち受けているのは「地獄」なのである。
(田村建光)