「吸血鬼」に日本球界が席巻される日も近い──。
前阪神・藤浪晋太郎がアスレチックス移籍に際し、高額年俸を勝ち取ったことで、今後メジャー入りをもくろむ日本人選手が増加の一途をたどりそうだ。
長年、MLBの取材を続けてきたスポーツライターは、次のように言う。
「藤浪の昨季の年俸は、推定4200万円。それが1年契約で325万ドル(約4億2250万円)プラスインセンティブですからね。さすが球団側から『吸血鬼』と呼ばれる、代理人のスコット・ボラスですね。近い将来のMLB挑戦を表明しているヤクルト・村上宗隆やオリックスの山本由伸などは、興味津々のようです」
もともとマイナーリーグの選手だったボラス氏は、データを重視。球団へのプレゼンでは豊富なデータを駆使し、選手の魅力を最大限に伝える交渉は有名だ。00年にアレックス・ロドリゲスが移籍した際、80ページにも及ぶ資料を作成。当時の北米スポーツ界で最高額の10年2億5200万ドル(約327億6000万円)の超大型契約を勝ち取っている。
少し前のデータだが、15年に米経済誌「フォーブス」に発表したボラス氏の取扱額は、当時の英ポンド換算で15億ポンド(約2904億9000万円)。手数料が5%として、年間7600万ポンド(約147億2000万円)とされている。
ボラス氏は現在、アストロズからFAで投手史上最高の9年総額3億2400万ドル(約475億2120万円)でヤンキースに移籍したゲリット・コールなどを抱え、高額な手数料を手にしている。だが、選手には寿命があり、数年後には引退する選手も出てくる。そのため、今後も選手発掘は必要で、日本人選手は当然、ターゲットになってくる。
菊池雄星のほか、オリックス・吉田正尚を5年9000万ドル(約117億円)という高額契約でレッドソックスに押し込んだのは、ほんの手始め。さらなるPRの材料になったのが、日本でくすぶっていた藤浪を、破格の条件でアスレチックス入りさせたことだ。そのインパクトは絶大で、藤浪に移籍に刺激を受けた虎のエース・青柳晃洋も、MLB挑戦をチラつかせ始めている。今後、「吸血鬼詣で」が始まりそうなのである。
(阿部勝彦)