やはり「ジキル博士とハイド氏投法」か。アスレチックス・藤浪晋太郎の悲惨なメジャーデビューに、古巣・阪神関係者はある意味、胸をなで下ろしている。
藤浪は現地時間4月1日のエンゼルス戦で、念願のメジャー初先発を果たした。初回、2回は完全投球だったが、3回は別人のような内容でKO。3回途中8失点で、降板を命じられた。
次回はチーム唯一の中6日ローテで、現地時間4月6日のレイズ戦に先発予定だが、防御率は初戦を終えた段階とはいえ、30.86。これでは先発どころか、メジャー生き残りのラストチャンスになる可能性が高い。
長年、MLBの取材に携わってきたスポーツライターは、
「オープン戦でも5試合に登板し、18回2/3を投げて18四死球と、阪神時代同様に細かいコントロールがないのは明らか。メジャーは球の勢いだけでは抑えられない。そう何度もチャンスはないですよ」
この現状に、阪神の球団内では「ポスティングで海外に行ってもらってよかった」という声が漏れ始めたのも無理はない。在阪スポーツ紙デスクは、次のように状況を説明する。
「開幕3連勝したように、今の阪神は岡田彰布監督の采配でうまく回っている。問題は先発陣です。2戦目に先発させた秋山拓巳では、やはり物足りない。現状ではもう1枚先発がほしいところですが、藤浪が阪神に残っていれば、口うるさい外野から藤浪コールが起きかねない。ましてメジャーで好投でもされれば、放出した阪神は赤っ恥です。今回のKO劇に、むしろ安心している関係者は多いですね」
岡田監督にしても、先発にこだわり続け、中継ぎでの登板を面白く思っていないとされる藤浪の処遇には困っていた、と伝わっている。
また、WBCで侍ジャパンが世界一になったことで、阪神のチーム内にはメジャー志向の選手が増え始めている。だが今回、藤浪のようにボールの力だけではメジャーで通用しないことが分かれば、それも沈静化し、当面は日本でのプレーに全力を注ぐことになるだろう。
藤浪には気の毒だが、阪神が「あかん、アレしてしまう」ためには、今回の大荒れデビューが大いにプラスになりそうだ。
(阿部勝彦)