令和3年の強盗事件の認知件数は1138件と戦後最少記録を更新。にもかかわらず、年明けから全国を闊歩する強盗グループの卑劣な犯行が耳目を集めている。指南役「ルフィ」とは何者なのか。特殊詐欺から鞍替えした黒幕の存在があぶり出されている──。
「ルフィ? 移民局に身元を確認し特定しました。ビクタン収容所で収容されている2人のうちの1人だ」
フィリピンのヘスス・レムリヤ法相は1月27日、全国で起きている連続強盗事件の首謀者、通称「ルフィ」を拘束していることを明らかにした。
拘束されている2人とは、渡辺優樹容疑者と今村磨人容疑者。捜査関係者によれば、「渡辺が主犯で今村は強盗団のサポート役」という関係だ。
1月19日に発生した東京都狛江市での強盗事件は、あまりにも衝撃的だった。被害者の大塩衣與さんが、90歳という高齢にもかかわらず、強盗グループによる暴行により無残な姿で発見されたからである。
「死因は殴る蹴るなどの激しい暴行による多発性外傷。左ひじは粉砕骨折をしていて骨まで飛び出していたという残虐な現場になっていた。玄関や窓ガラスが割られた形跡こそありませんが、インターホンに接続される玄関先のモニターが破壊され、広範囲に物色された形跡があり金品も消えていました。大塩さんに金品のありかを案内させるために、あえて昼間の在宅時を狙ったようです」(社会部記者)
しかも相次ぐ緊縛強盗事件は、メンバーを替えながら全国規模で展開、その範囲は14都府県にまたがり累計で20件に及ぶとされている。その多くが高齢者を狙い、犯行現場に居合わせた住民や店主などを何の躊躇もなく複数のメンバーで徹底的に「叩く」──実に残忍で荒っぽい手口だった。
この緊縛強盗団が1月12日に襲撃したのが、千葉県大網白里市にあるリサイクル金券ショップ「てんとう虫」だった。店主である内藤政行さん(76)が戦慄の現場を振り返る。
「恐怖の時間でした。店のバックヤードで作業をしていた19時半頃、突然ダダッと押し入った黒いフードの男に顔を殴られました。その数秒後に白いフードの男も現れて、2人して私を数十回殴りつけて‥‥ケガは左の下瞼を6針縫い、鼻と両頬合わせて3カ所の骨折ですよ。犯人たちは殴りながら『金庫の場所はどこだ?』と聞いてきましたが、私は口を貝にして抵抗しました。しまいには、後ろから入ってきた1人が私の口にガムテープを貼ろうとしてきたので、必死に抵抗しました。時間にして3分ぐらいだったかな? 私の命を含めて何も盗られなかったのは不幸中の幸いでしかなかった」
行き当たりばったりの犯行からすぐに「実行犯」は特定された。
「逮捕された自衛官の中桐海知容疑者は運転手を務めていた強盗団のメンバー。千葉県警が中桐のスマホを復元・解析したところ、『狛江市を強盗する』という文言とともに大塩さんの住所が記されたメッセージが見つかった。さらに芋づる式に逮捕された実行犯グループの複数のスマホに、フィリピンの国番号『63』を発信元とする『ルフィ』からメッセージが送られていたことが発覚。この『ルフィ』の正体こそが、渡辺容疑者だったんです」(社会部記者)
人気漫画のキャラクターをもじっているが、渡辺容疑者はなんと、フィリピンの収容所の中から犯行の指示・手配を采配していたというのだ。