ターゲットは富裕層だけではない。狛江市の現場に足を運んだ際には、ガレージに止まる4台の高級車が目を引いたが、多額の金品がなくても標的になりうるというのだ。
「1月9日の川崎市宮前区、10日の足利市、12日のさいたま市西区、14日の龍ケ崎市とつくば市の事案では、いずれも男3人組でハンマーとガムテープを持参し、被害額は一部を除いて少額なケースばかり。3000万円を強奪した中野区が『特A級』に記載されていたとすれば、言い方は悪いが、こちらは『C級』。10年以上使い古された名簿が使われている可能性がある」(社会部記者)
龍ケ崎市で被害に遭ったAさん(75)がショックも冷めやらぬ中、重い口を開いてくれた。
「午前1時頃に寝室の複層ガラスが『ガシャーン』と割れる音と妻(74)の『キャー』という悲鳴で目を覚ましたんです。寝ぼけまなこのまま状況を把握できずにいると、侵入してきた男に、口にガムテープを貼られた。『声を出すな、静かにしろ』と怒鳴りつつ『カネはどこにある?』と聞いてきました。言われるがままに財布を置いておいた洗面所まで案内しました」
部屋の電気をつけると、包丁を持つ男と金槌を持つ男の計2人の存在を確認。財布から現金2万円と1000円札5枚ほどを手渡したが、男たちは“おかわり”を要求してきた。
「金槌を持つ男から筆談で『もっとないのか?』と尋ねられましたが、『もうありません』と筆談で返答しました。その後、金庫の場所や通帳の場所を聞かれて教えました。通帳残高は、年金を引き出したばかりで携帯料金用に残していた5万円だけでした」(Aさん)
結局、強盗団は通帳を奪うことなく、車2台分の鍵を奪ってそのまま逃走したのだという。
「固定電話の回線は切られていましたが、携帯電話は無事でした。口と両腕を必死に動かしてテープを剥がして110番通報しました。時間にして1時間半ぐらいでしたね。盗む金品のない年金生活者ですが、老夫婦2人暮らしだから狙われたのかな‥‥」(Aさん)
こうした貧困高齢世帯が被害に遭ったのは、前述したように2大グループがそれぞれ「精度」の異なる名簿を使っていたためだろうか。
もはや、金持ちも貧乏人も関係ない。誰でも被害者になりうるのだ。根本氏が警鐘を鳴らす。
「田舎で注意すべきは訪問販売員を装った下見要員です。冬場はストーブ用の灯油を売りながら地域の情報を収集するケースがあります。保険外交員や某健康食品の販売員など普段から顔を合わせている人でも油断大敵。むやみに個人情報を明かさない方が得策です」
何とも生きにくい世の中ではないか。日本の治安を脅かす強盗団の一掃を願うばかりである。