事件

横浜地検川崎支部から脱走した杉本容疑者の荒廃人生20年(2)

 ヤンチャなサッカー少年の“スギ”を知る同級生たちも、高校進学後の杉本容疑者の様子を知っている者は少なかった。

 その後、杉本容疑者の生活は荒廃の一途をたどっていく。神奈川県内の県立高校に進学したが、ほとんど通うことなく退学。職を転々としながら、地元のパチンコ店などで働いていた時もあった。そして、この頃から川崎周辺の不良仲間と遊ぶようになった。

 そして、杉本容疑者は暴力事件を起こす。

「3年前の10月、傷害事件で逮捕状が出ました。自宅に捜査員が訪れると、それに気づいた杉本容疑者は2階のトイレに駆け込み、窓を開けて飛び降りた。捜査員が追いかけたが、すでに姿はなかったそうです」(社会部記者)

 実は、今回の逃走は2度目だったのだ。3年前の逃走は3日間で諦め、みずから出頭して御用となったという。

「杉本容疑者は2階から飛び降りた際に、足を骨折していたそうです。それでも追いつけなかったことを記憶している捜査員も少なからずいました。今回も逃走を許したのですから、その時の教訓は生かせなかったということになります」(前出・社会部記者)

 また、この時期に杉本容疑者は少年院に入ったという。捜査関係者が話す。

「残念ながら、現在の少年院は更生施設とは言えない。悪知恵をつけて出所してくるヤツらが大半だ。『どこそこの不良グループのリーダーとは少年院で一緒だったんですよ』などと自慢気に話して、ヤクザのマネ事ばかりしたがる。杉本も少年院で横浜や横須賀の不良たちと知り合い、地元に帰ってからは後輩たちにパチンコ代をおごってやったりして、大きな顔をしていたようだ」

 イッパシの不良少年になってしまった杉本容疑者だが、前章でも触れたように妻がいた。1年ほど前に、同い年の女性と結婚。ほぼ同時に娘が生まれ、実家を出て暮らしていた。その結婚生活も杉本容疑者のDVなどで破綻。今回の事件時には別居中だったという。

 その妻は事件後に、DVより厳しい仕打ちを受けている。あるジャーナリストが語る。

「杉本容疑者の妻はブログを記していたのですが、逃走後も閲覧できる状態だったために、旧姓や本名、さらには妻や娘の写真まで無断で転載されてしまいました。中には、杉本容疑者を断罪したいのか、自宅の住所を割り出そうするヤカラや、妻の人格攻撃をするネットの住民まで現れています。そのブログは個人情報の流出が止まらないことへの不安がつづられ、閉鎖されました。流出してしまった写真はネット上から消し去ることは不可能です」

 妻だけではない。今回の事件で最も迷惑を被っているのは、杉本容疑者のまだ幼い妹と弟だろう。

 すでに、テレビや新聞などの記者がいなくなった頃、杉本容疑者の実家付近で取材をしていると、その両親とともに弟と妹が自宅から出てきたのだ。記者が慌てて近づくと、足早に車に乗り込み、猛スピードで走り去っていったのだった。

 一家の表情は皆、憔悴しきっていた。

 身勝手な行動でどれだけの迷惑をかけたのか、杉本容疑者が知る日は来るのだろうか。

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