総務省が公表した2022年の住民基本台帳に基づく人口移動報告によると、東京都は転入者数が転出者数を上回り、「転入超過」が3万8023人となった。2021年は東京都の転出者数が転入者数を上回っていたが、コロナの感染拡大に伴う行動制限が緩和され、移動が活発化したことなどが背景にあるとみられている。
つまり、地方移住をしていた人達がふたたび東京に戻ってきた、と考えられるのだ。そこで、まさに地方移住をしていたものの、東京に「出戻り」をしてきた女性に「地方移住の後悔」を聞いた。
「コロナ禍をきっかけに前から住んでみたいと思っていた沖縄に移住しました。でも、もう住みたいとは思いません。私は内地(本島)から出店された飲食店で働いていたのですが、まず給料の割に家賃が高い。沖縄では県外の人間が部屋を借りるときにウチナーンチュ(沖縄の人)の連帯保証人がいないと貸してくれないということがあるので、保証会社を使って借りたのですが、那覇市の中心地だと家賃は1Rでも7万円でした」
給料は20万円弱。家は職場から歩いていける距離だったため交通費はかからなかったが、沖縄ならではの生活費に苦しんだという。
「食費は島のものを食べる分には安く済むのですが、県外の野菜は輸送費がかかるので2~3倍はするんです。沖縄料理は好きだけど、さすがに1カ月食べれば飽きてしまうので泣く泣く内地の野菜を買っていました。また、沖縄は湿度が高いので洗濯物が全然乾かない。そのため、乾燥機が必須で電気代が常に1万円以上。夏場だとエアコンも必要になるので1.5倍になっていました」
沖縄県の最低賃金は都道府県別でもっとも低いとされている。また、県外のものは輸送費がかかるため、通販で買物をしても送料無料の対象ではないことが多い。
「服にも食にもこだわりがいっさいない人であれば、沖縄暮らしは楽しいと思います。ただ、都会と違って人間関係のストレスから解放されると思っていたのですが、それは間違いでした。コロナ禍もあったと思うのですが、内地の人間は敬遠されました。私には沖縄は向いていませんでしたね」
もちろん、すべてがこの女性のケースと同じではないだろう。デメリットも享受しながら沖縄に馴染み、移住したことを心から喜んでいる人も少なくないに違いない。
ただ、「出戻り」となった人が多いことも、冒頭のように数字が示しているのである。