世界一奪回を目指すWBC日本代表・侍ジャパンは最終ロースター30人に「史上最強」の呼び声高いメンバーを選出した。ところが2月17日からの宮崎強化合宿を前に様々なゴタゴタが発生。早くも栗山英樹監督(61)は頭を抱え込み、ノイローゼ寸前に陥っているというのだ。
代表選出されたメジャーリーガー5人の早期合流が困難になっている。ダルビッシュ有(36)だけは唯一、所属するパドレスから特別許可をもらい、合宿初日から参加することを表明。しかし大谷翔平(28)、鈴木誠也(28)、吉田正尚(29)、日系2世のヌートバー(25)の4人は所属球団からゴーサインが出されず、見込まれていた予定から大幅にズレ込んで3月4日前後のチーム合流が決定的となった。
「当初は注目度を二分するダルと大谷の2人が宮崎合宿にそろい踏みする予定でしたが、フタを開けてみたらダル1人だけ。侍ジャパンを統括・運営しているNPBに対し、全面協力している合宿地・宮崎市の有力者や市政関係者たちは『話が全然違うじゃないか』と怒り心頭です。何でもNPB関係者や栗山監督は平謝りせざるをえない状況に追い込まれているとか。大谷が宮崎合宿に来ないとなると、当てにしていた合宿期間中の経済効果も数十億円単位で落ち込むと嘆いています」(宮崎市行政関係者)
ソフトバンク、中日との強化試合も含めた宮崎合宿はNPBの管轄下となっているため、大会規定でメジャーリーガーの合流は基本的に認められていない。あくまでもダルビッシュは「特例」だ。
あらかじめNPB側は保険会社に見積もりを依頼、みずから管轄する期間中にメジャー組が大きな故障を負う“万が一”に備えて億単位の掛け金となる「傷害保険」の支払いを準備。その手はずは整ったものの、4人は早期合流しなかった。
メジャー組の試合出場が可能となるのは、大会の運営を担うWBCIが管轄する強化試合で、3月6日の阪神戦、翌7日のオリックス戦のみ。強化合宿に参加するダルビッシュでさえ、この2試合以外は出場できない。
1月17日の時点でこの事実を知り、焦りの色が濃くなっていた栗山監督は「それじゃダメ。無理でしょう。いきなり本番に使えなくなってしまうでしょう。ケガしちゃうんで。早く来てよ、というのは選手たちも思っているし、1つのチームになるんだったら、それでも遅いぐらい」と声を荒らげて催促していたのだ。いわば大谷らの“ドタキャン”空白に業を煮やしているというのである。
「ところが、この『それじゃダメ』発言は日を重ねるごとに各メディアが“忖度”し、一切使わなくなった。NPBや(侍ジャパンを運営する)NPBエンタープライズ側は計算高く、朝刊紙メディアに限定し、多忙の合間にもかかわらず栗山監督の独占インタビューの場をセッティングし“恩”を売ったのです。結果、同発言は盛り上がりに水を差さぬよう“なかったこと”になった」(朝刊スポーツ紙遊軍記者)
とはいえメジャー組の合流が大幅に遅れれば、現実的にチームとしての大ダメージは必至だ。ほぼ“ぶっつけ本番”で3月9日からの中国戦を迎えることになる。MLBの事情にも精通するセ球団のスコアラーが言う。
「鈴木、吉田、ヌートバーの3人はいずれも中堅が本職ではなく、昨季12試合だけ中堅に就いた経験のあるヌートバーにレギュラーを任せるしか道はないだろう。ただし彼は日本語が挨拶程度しか話せない上に、侍ジャパンのNPB組メンバーを誰も知らない。大事なセンターラインを任せて本当に大丈夫なのか。大谷も外野を守れるとはいえ大幅に遅れることは3人と同様で、それまでは、DHが本職の近藤健介(29)とユーティリティープレーヤーの周東佑京(27)の2人でしのぐしかありません。外野がこんなスカスカになってしまっている現状をどのように考えているのか。真剣に選んでいるのか、と球界内でも失笑を買っている」