第3回WBCの本大会開催まで、とうとう1カ月を切った。代表候補の侍たちも、徐々にコンディションを仕上げているようである。目立って聞こえてくるのは、やはりキャプテンの動向だ。阿部の背中を見て、チームが始動しだした。
現役メジャーリーガーが参加しない今大会、侍ジャパンの中心は間違いなく阿部慎之助(33)だ。
いや、山本浩二監督(66)は、イチロー(ヤンキース)の出場可否が判明するより前から、阿部を全日本のキャプテンに指名していた。
昨季、打率3割4分、104打点でセ・リーグの首位打者と打点王の二冠を獲得した阿部は、今や誰もが認める球界最高の打者である。
指揮官が「4番」を明言したのも納得だ。
そのうえ、守備の負担が大きい捕手として投手陣をリードする。
阿部の打力を生かすために、「4番・指名打者」という選択肢があってもよさそうなものだ。
かつて筆者は、足に故障を抱える阿部に、
「一塁か指名打者に転向したらもっと打てるのでは?」
と尋ねたことがあった。
しかし阿部は、笑顔でこう返してきたのである。
「キャッチャーがおもしろいんですよ。チーム事情やコンディションによっては一塁や指名打者もあるのかもしれないけど、キャッチャーのおもしろさを捨てることはできない。全ての投球に関われる。野球をやっているって感じられるんです」
侍ジャパンをまとめるにふさわしい、人一倍の野球好きだと確信できる。
昨秋のアジアシリーズは、日本シリーズで足の故障が再発したにもかかわらず釜山に帯同した。
「できるかぎりのメンバーで臨まなければ韓国に失礼」
と、渡韓を首脳陣に直訴したと聞く。球界を背負って立つにふさわしい人間性も兼ね備え、人望は厚いのだ。
阿部が中心にいるからこそ侍ジャパンに大きな可能性を感じるのは筆者だけではないだろう。
第1回大会は右肩痛で出場辞退、第2回大会は城島の控えの立場で完全燃焼できなかった。
チームの大黒柱として臨む今大会、「国内組のすごさを見せたい」と話す阿部からは、なみなみならぬ決意が伝わってくる。
「世界一を獲りたい。負けたらメジャー組がいなかったから、となってしまう。日本プロ野球の底力を見せるよ」
この言葉を信じたいものである。