東京都狛江市の強盗殺人事件を機に、一網打尽となった「ルフィグループ」。実行犯への指示役がフィリピンに潜っていたこともさることながら、被害総額が60億円を超える点からも捜査当局は、全容解明の檄を飛ばすほどだった。ところが、一時は一枚岩と思われていた指示役の「4人組」が仲間割れしていたことが発覚。その動向が注視されている──。
「本件(狛江市の強盗殺人事件)との関連性はもとより、犯行グループの解明、検挙に向け捜査している」
2月15日、東京都議会で警視庁の小島裕史警視総監は、そう答弁した。都庁詰め記者が語る。
「この日は、都議会の開会もあり、小島総監は東京都の治安状況について答弁する予定でした。ところが、折からのルフィグループの報道で都民からも『捜査が遅いのではないか』との指摘もあったそうで、あえて、強殺団の犯行についての全容解明への決意を示すことになった。それほど捜査当局も今回の事件について、警察の面子を懸けて、犯行グループの実態を明らかにしようとしている」
現在、ルフィ強殺団の「指示役」とされる4人のメンバー、渡邉優樹容疑者(38)、小島智信容疑者(45)と今村磨人容疑者(38)、藤田聖也容疑者(38)をいずれも都内の渋谷署に勾留し、連日、個別に取り調べ中だ。前例のない徹底ぶりを捜査関係者が明かす。
「4人は完全隔離の状態でお互いにまったく遮断された24時間監視の環境で取り調べを続けています。捜査員は、強盗などの粗暴犯を取り扱う捜査1課と詐欺などを調べる捜査2課の合同チームでおのおのが入れ替わりで取り調べているそうです。中には、19年にこのグループの前身であるフィリピンを拠点にした特殊詐欺事件の捜査に関わった人物が投入されるなど、ルフィ強殺団の全容解明に全力を尽くしている」
急ピッチの調べが進む中、2月17日には、ルフィ強殺団の“別動隊”が日本で犯罪を繰り返してきたことが発覚。ルフィ一味の残党が日本へ活動拠点を移していたことが明らかになったのだ。
「実は昨年6月に逮捕され、現在も裁判が続いている窃盗事件の被告人が公判中に、渡邉容疑者との関連を証言する事態となっている。2月17日の初公判では、40歳のA被告は、キャッシュカードをだまし取るなど3件の容疑について認めているほか、その動機について、フィリピンで渡邉容疑者を頂点とする特殊詐欺のグループのメンバーだったことを証言。その上で、36人の“かけ子”らメンバーが摘発された19年11月以降は、マニラでの『かけ子』の拠点がなくなり、日本に活動拠点を置き特殊詐欺を繰り返していた『ニホンバコ』の幹部だったことを認めています。このA被告はいわばルフィ強殺団の別動隊と見られ、現在も摘発を逃れた複数のグループが国内と東南アジアに散らばっていることが白日の下にさらされたといえます」(司法記者)
しかも、現在公判中のA被告は、逮捕された「4人組」の1人、今村磨人容疑者と同格の「かけ子」グループのまとめ役と見られる人物だ。フィリピンで取材にあたっているジャーナリストが解説する。
「本来、渡邉が会社でいう社長ならば、今村やA被告の立場は係長クラスで、社長の渡邉とは直接的にあまり接点はない。加えて、渡邉は警戒心が強く、側近を同郷である北海道出身者で固めていた。たまたま今村は渡邉がススキノで水商売をしていた頃からの知人で、『フィリピンでうまい儲け話がある』と聞きつけ特殊詐欺グループに合流した関係で、それほど親しくはなかった。実際のルフィ強殺団は渡邉を中心として、その金庫番を4人組の小島が、そして番頭役を藤田が担っている組織でした。いわばその中で今村は新参者でしたが、21年春に渡邉ら3人が入国管理法違反で、フィリピンのビクタン収容所に相次いで入所することで関係性が変化することに。収容者によれば、すでに19年から入所していた今村に、他の3人が収容所内での『処世術』を教えてもらったことで、4人で徒党を組むようになったのです」