日本で少子化が問題視されて、もう何年にもなる。低所得でなかなか結婚できない環境が拡大しているのに、政府は見て見ぬフリをして、金持ちを優遇する「アベノミクス」を推進してきた。これで少子化が問題だと口にする政治家は、根本的な解決策に手を付けず、騒いでいるだけだとみられてもしかたがない。
日本の出生率は1.4。先進国の出生率の低下はどこも似ているが、お隣の中国は1961年以来60年ぶりの人口減となってしまった。中国国家統計局の発表によると、2022年末の人口は14億1180万人で、出生率は1.7。近い将来、世界最高の人口を擁する国はインドになると推測されている。
中国が2015年まで「一人っ子政策」を実施していたのは、よく知られていたことだ。カップル2人に対し、子供は1人。カップルの各両親4人が一人っ子の世話をする状況が、最近まで続いていたのだ。この政策は16年に解除され、21年からは3人目も許可するという政策に変化してきた。しかし、それでも出生率は上がらない。その現状について、北京や上海のエリート層に取材をしてみた。
富裕層までとはいかないが、お金に余裕があるエリートカップルたちは「一人っ子政策」の下で生まれ育った。
「わがままをしても、両親や祖父母たちがそれを許す環境だったので、自分たちが世界の中心という利己的な思考形態です。中国人は拝金主義で、親子の関係もドライだと指摘されることがありますが、日本人の情という観念は残念ながら、中国人にはなくなってしまったと言われても反論できない状況です。これらのエリートカップルたちは、子供を生むより『自分たちが楽しんだ方がいい』との強い意志があります」(上海の40代の大学教員女性)
現在の中国では、子供を育てるには莫大な費用がかかるので、それを避ける動きも強いと指摘する。幼稚園に通わせる料金は高く、メイドの料金も高騰しており、おいそれと雇えないのだという。
「中国は春節で学校が休みでしたが、その後の長い休みは夏までありません。エリート層が通わせる小学校は、子供と両親が一緒に旅行することを課題としていて、そのためにわざわざ海外旅行に行く人もいる。本当に行ったという証明をするために、学校には両親と子供が一緒に並ぶ写真を提出する。これが苦痛だと、中国では問題視されているんです」(北京の60代主婦)
日本は幼稚園に通わせる家庭に対し、自治体が補助するシステムがあるが、中国にはそんなものはない。
「北京や上海の大都会には私立の幼稚園がいくらでもあり、国が費用の補助はしていません。中国は社会主義だという建前なのに…」(前出・北京の60代主婦)
中国と日本の少子化の理由は少々異なるが、両国とも根本解決へと動いていない事実は変わらないのである。