芦田愛菜さんが慶應義塾大学法学部への進学が決まったと、3月4日付のスポーツ紙各紙が一斉に報じた。
「中学の頃から法学部を志望していた」という。昨年5月に一部女性誌などが報じた「医学部内定」のデマはなんだったのか、と呆れるしかないが、世間の「医学部と法学部? 理系と文系からして全く違うじゃないか」という反応もちょっと違う。法学部政治学科への内部進学は「医学部進学と紙一重の神業」なのだ。慶應関係者が内部進学の実情を明かす。
「愛菜さんが通う慶應女子から医学部へ内部進学できるのは、200人中4人。上位5位、6位の生徒さんは、他の付属校の成績上位者や慶應女子上位4人の生徒さんが医学部を志望しなければ、幸運にも滑り込めるという狭き門です。日本人女性初の宇宙飛行士、向井千秋さんも慶應女子出身ですが、医学部内部進学枠から漏れ、一般入試で医学部を受験して合格しているほど。慶應で内部進学というとチャラいイメージがありますが、医学部への内部進学は別格。今年の中学受験の慶應女子の偏差値は76でした。中学の受験勉強は長くて4年ですが、内部進学で医学部を目指すとなると、さらに6年間、偏差値76以上の才媛と競り合って、常に上位4人に入らねばならない」
医学部内部進学の次に難しいのが、愛菜さんが合格した「法学部政治学科」だ。慶應関係者が続ける。
「医師には資質や体力が求められますから、成績優秀だからといって皆が医学部を目指すわけではない。一般的に慶應女子の成績優秀者上位10名は、医学部か法学部に内部進学します。中学入学時に愛菜さんが語っていた『将来は病理医や新薬研究をしたい』という夢からして、医学部や薬学部を希望していたのは事実でしょう。ところが先ほど言ったように、医学部への内部進学は上位4人、外部受験をするなら芸能活動を諦めて医学部専門の進学塾に通わねばならない。愛菜さんが頭が良いと思うのは、そこで子供時代の夢を軌道修正して、不確定要素だらけの医学部内部進学から現実的な進路に変更したことです。その気になれば、さらに成績上位に食い込むこともできたでしょうが、在学中に女優を続ける『決意』を固めたのでしょう。現実的といっても、6年間、女優の仕事を続けながら成績上位者ベスト10にランクインし続けた結果、法学部政治学科に内部進学したのですから、内定の報を聞いてのけ反りました」
愛菜さんだけでなく、皇室では愛子内親王や悠仁親王も高校生の頃「成績はトップクラス」と、女性誌記者に「北朝鮮の国営放送」のような陳腐な表現で称賛されていたが、それもどうなのか。慶應女子にも学習院女子にもお茶の水附属、筑波大附属にも、平凡なモブキャラなどいない。
愛菜さんや、同じく慶應への入学が決まった鈴木福さんと一緒に12年前、テレビの前で「マルマルモリモリ」を歌って踊っていた受験生全てが3年間、不自由を余儀なくされた新型コロナとの戦いに勝った、自らの人生の主人公なのだ。
(那須優子/医療ジャーナリスト)