日本全国が涙で濡れた──。
NHK Eテレで放映中の幼児番組「いないいないばあっ!」(略して「いなばあ」)のマスコットキャラクター「うーたん」が3月いっぱいで卒業することが明らかになった。
不穏な雰囲気は、2月からあった。4年ごとに交代する進行役の女の子(今は7代目の「はるちゃん」)とうーたんが「お別れソング」を歌っていたからだ。
NHKで働く筆者のママ友も「うーたん卒業」は知らなかったといい、
「普段は口数の少ない息子がバイト先から帰ってくるなり『うーたん、卒業するって』と涙ぐんでいた。息子は今月末に大学の卒業式を控えていて、まさか息子の卒業式を前に『うーたん卒業』で、親子で泣くことになるとは」
呆然としている様子なのである。「中の人」が引退しない限り、子供番組のキャラクターは永遠の存在だと思われていただけに、ちびっこ達だけでなく、すでに子育てを終えた母親、YouTubeやニコニコ動画で「うーたん」をイジっていた成人ネットユーザーにも「うーたんロス」が広がっている。
しかもちびっこ達には、アニメ版ポケットモンスターのサトシと、サトシピカチュウの卒業に続く衝撃。テレビ関係者が解説する。
「『ポケモン』と『いなばあ』は同期なんです。ポケモンアニメは97年から放映開始ですが、任天堂からポケットモンスター赤・緑が発売されたのは96年。その縁で、ピカチュウと21年末に放映した『いなばあ』放映開始25周年特番では、同番組のもう1匹のメインキャラクター『ワンワン』と同じくデビュー25周年を迎えたピカチュウが、放映局の垣根を超えて共演しました」
別のテレビ関係者が追随する。
「96年は、テレビ業界ではエポックメイキングな年なんです。『いなばあ』と『ポケモン』の他にも、平成版ウルトラマンシリーズ、『名探偵コナン』など、今でも人気の長寿子供番組が始まった年ですから。前年の阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件で社会不安が広がった中、世相を敏感に察した子供達を励ます番組が多く生まれたのは、偶然ではないでしょう。阪神・淡路大震災、東日本大震災、新型コロナ…と大人でも心が折れそうな局面に、子供達の心を支えてきたキャラクターが卒業するのは、世代交代とはいえ、ぽっかり穴が開いた感じ。簡単に埋められそうにない穴ですね」
ウルトラマンとコナンには「卒業フラグ」が立たないことを祈るしかない。