「3月7日に行われた韓国代表との強化試合で、バックスクリーンに一発を放ちました。関西マスコミは今季1号と大騒ぎですが、これは危険な兆候ともいえる。本人は大谷翔平に刺激を受けたらしいが、置かれている環境も立場も違う。変に対抗意識を燃やすと、打撃がバラバラになる可能性があるわけです」
球界OBがこう不安を口にするのは、阪神・佐藤輝明の打撃についてである。
阪神に入団以降、2年連続で20本塁打以上を記録した長打力、飛距離は疑いようもない。だが、それにこだわりすぎて必要以上にバットを強振すれば、相手投手の術中にハマる危険性が増すからだ。
「当たれば飛ぶのだから、打席でどっしりと構えて、アタフタする必要はない。昨年の悪い時は、打ち気にはやるあまりどんな球にも手を出して、ぶざまに三振することが多かった。岡田監督に代わり、やっと球を待てるようになったのに、このままでは逆戻りするかもしれない」(前出・球界OB)
侍ジャパンの一員たる大谷が阪神との強化試合で、片膝をつきながら特大アーチを放ったあの打撃が、さらに悪影響を与える可能性もある。スポーツ紙遊軍記者は、
「大谷のあの形は、フォークで三振した佐藤の打撃フォームを彷彿させる。ところが佐藤はあんなスイングではボールにも当たらず、三振の山を築いてきた。なんとかしてヒザをつき、片手打ちになってもスタンドに放り込める打撃をしたくて仕方がなくなるでしょうね。まさしく『大谷の呪縛』に囚われた状態と言えます」
そう心中を察するのだ。
阪神が「アレ」を果たすには、佐藤が昨年以上に活躍することが必須条件だ。だが、大谷は大谷。佐藤は佐藤だ。メジャーリーグでMVPを獲得し、今や米球界で「ユニコーン」と称される二刀流の残像を追い求めるのは、時期尚早だろう。
岡田監督も危険を察知しているのか、佐藤の一発にも「まぁ、徐々に出るとは思ってたけど、そらなぁ」と、手放しでは喜んでいない。一日でも早く、大谷の呪縛から抜け出すしかない。
(阿部勝彦)