開幕から調子の上がらない阪神・佐藤輝明に「大谷後遺症」を指摘する声が出ている。在阪スポーツ紙デスクは佐藤の現状について、次のように説明する。
「岡田彰布監督の方針で、今季は大学時代から慣れ親しんだ三塁の守備に固定されました。打順も5番を任されるなど、チームの中心として期待されている。ところが、たまに長打は放つものの一発も出なければ、チャンスには弱い。昨年と大差がないどころか、悪いかもしれない」
現段階で佐藤の打撃が期待外れに終わっているのは、侍ジャパンの大谷翔平が3月6日に行われた阪神との強化試合で放った特大アーチが原因だという。ベテランのスポーツ紙記者は、
「佐藤はオフにソフトバンクの柳田悠岐と自主トレをしたことで、再び飛距離の魅力に取り付かれておかしなスイングになり、岡田監督に叱られた。そのため、春季キャンプではその修正にかなりの時間を割いているのです。そんな直後に、大谷の人間離れした飛距離を見せつけられましたからね。また振り回すだけの打撃に戻ってしまった」
佐藤は入団時から、天性の飛距離が注目されてきた。事実、田淵幸一氏に続く、新人から2年連続20本塁打を記録しており、長距離砲としての能力が高いのは証明されている。
だが、ギリギリでスタンドに届く100メートルの一発でも、大谷が放つ140メートル弾でも、本塁打は本塁打。チームに勝利をもたらすには、飛距離は関係ない。バットの芯に当たらなければ意味はないのだ。阪神OBからも、
「元々、天性の飛ばす力はあるのだから、あそこまで振り回す必要があるのか。打ち気にはやってぶざまなスイングを繰り返すのが関の山だ」
と手厳しい声が漏れている。
本来なら練習で修整するしかない。だが、すでに公式戦は始まっており、キャンプと違って十分な時間が取れるはずもない。ただでさえ他球団の同世代の選手に比べて、練習量が少ないという指摘がある選手。しかも人気球団の宿命からか、
「ルーキーからチヤホヤされてきたことで、勘違いしている部分もある」(前出・ベテラン記者)
WBCではパ・リーグの本塁打王、山川穂高でさえ、大谷の飛距離を目の当たりにして「野球を辞めたくなった」と落ち込んだほど。佐藤がライバル視するのは10年早いのである。
(阿部勝彦)