いつの時代でも人々の憧れの存在――それが女優。
しかし、近年、突然引退する例があとを絶たない。芸能レポーターの城下尊之氏と佐々木博之氏に、記憶に残る女優の引き際を語ってもらおう。
城下 まず、引き際の美しさで言ったら、山口百恵をおいて他にはいないな。
佐々木 彼女は引退後に、中途半端に表に出てこないことで、好感度が増したよね。
城下 絶頂期で引退して、今や伝説ですからね。
佐々木 最近なら、09年に引退した桜井幸子かな。NHKの連ドラ「おんなは度胸」でヒロインを演じたし、「高校教師」(TBS系)の二宮繭役も忘れられない。その後も野島伸司脚本のドラマで活躍していたし、09年にドラマ「コンカツ・リカツ」(NHK)で主演して、その年に引退宣言。ある意味、いい時期に辞めたと思う。
城下 翌10年には宝生舞も引退した。彼女は個性があってよかったのに‥‥。07年に結婚してからも続けていたのに辞めるとは思わなかった。「ショムニ」(フジテレビ系)シリーズの丸橋梅役はハマっていた。
佐々木 「これからの人生は、宝生舞としてではなく、役でもない自分自身の人生を確立させたい」って、辞めたんですよね。
城下 時代劇からシリアスな役、コミカルなものまで演じられる女優だった。続けていれば、いい脇役になっただろうなぁ。彼女が辞めたのは、ちょっと残念だったな。
佐々木 それにしても「女優業を引退します」って宣言するようになったのは、最近の傾向だよね。
城下 それって、ホームページやブログができてからじゃないかな?石田未来や加賀美早紀。長谷部瞳も引退宣言した。
佐々木 “事実上引退”っていうのもある。だけどほとんどの人は、わざわざ宣言するほどの女優さん? っていうのが正直なところだな。
城下 結婚から引退っていうのは多いよね。相手としては、うれしいだろうし、それは一つの人生だけど、女優としては‥‥。
佐々木 結婚引退は、芸能界に戻ってくる可能性が大きいしね(笑)。
城下 結局、引退する人たちって、それほど女優業に執着していないってことじゃないかな。
佐々木 次々と若手が出てくるし、自分のポジションをそのまま守るのは難しいですからね。
城下 特に主演を張ってた人が、二番手、三番手っていうのは難しいよね。
佐々木 年齢を重ねるごとに、演じられる役も変わってきますからね
城下 「あなたの代わりはいくらでもいるよ」っていうポジションの人たちは、辞めるか、消えていくかなんだよね。
佐々木 引退して、女優ではないけれど、華々しくカムバックした人もいますよね。
城下 高木美保は98年にパニック障害の療養を理由に、栃木県に移住して農業を始めた。今では、コメンテーターとしてみごとに返り咲いた。
佐々木 カムバック組としては、何といっても君島十和子 (旧姓吉川)ですよ。今や、自身の名前が付いた化粧品ブランドを持つ実業家で、カリスマセレブママとしても人気がある。
城下 セレブ御用達デザイナーの君島一郎の息子、君島明(現・誉幸)氏と婚約を発表した時は〝玉の輿婚〞と騒がれたけど、明氏にソープ嬢との間に認知した子供がいたり、父・一郎氏(故人)には本妻と愛人がいる二重生活だったり、次々とスキャンダルが明らかになった。
佐々木 それでも、実業家として出てきた時は、美しさを増していた。君島ブランドよりトワココスメのほうが有名なくらい。
城下 女優でいた頃より、今のほうが断然、輝いている。
佐々木 たとえ引退宣言をしても、芸能界って戻れるところなんだろうな。
城下 ただ、厳しい見方をすれば、引退する人って女優を全うできなかった人だと思う。生涯、女優であり続けた人が、本物の女優だと思いますね。