今年9月、今季限りの引退を表明した女子ゴルファーの古閑美保(29)。スター選手の突然の決断について、熱烈なゴルフファンとしても知られる作曲家の平尾昌晃氏は「彼女らしい、まさに〝引き際の美学〞だね」と話し、エールを送る。
「彼女が20歳の頃から見続けていますが、当時から豪快なスイングといい、飛びっ切りの笑顔といい、華のある子が現れたなという印象を受けたものでした。私の主催する『平尾昌晃チャリティゴルフ』には、スケジュールの都合で出場がかないませんでしたが、ツアー会場で私を見つけると飛んできて、『先生~、オファーをいただいたのにすみませんでした』なんておじぎをしてくれましたよ。そんな人見知りしない、明るさが実に魅力的でしたね」
古閑は01年、19歳でプロデビュー、21歳の誕生日を迎えた3年目の夏に「ヨネックスレディス」でツアー初優勝を飾り、翌年には海外メジャーデビューを果たす。同時に、“元祖ヘソ出し”ショットで、ゴルフ好きのオヤジたちを魅了した。
「彼女には、凄いタレント性があるよね。それも、ただのアイドルゴルファーじゃなくて、実力もしっかりと兼ね備えていた。一流のプロって、どの世界でも負けず嫌いなものだけど、ここぞという場面での眼光の鋭さからも、それはうかがえるし、自分に厳しい練習を課している姿勢は、後輩からも聞こえてきてましたよ」
今年、ツアー初優勝を飾った同郷の後輩・笠りつ子が涙を浮かべながら、「古閑先輩の(厳しい指導の)おかげです」と話したのも古閑の面倒見のよさを物語っていた。
「そんな陰の努力を見せないところも、彼女らしかったよね。ツアーのプロアマの表彰式でも、グラスを片手にニコニコと談笑している彼女に、『そんなに飲んで( 明日の試合は)大丈夫?』って聞くと、『早く寝ますから』なんて答えてました。プロとして(スポンサーに対し)気配りしながら、翌日はしっかりとファンにいいゴルフを見せる。たぶん、サウナなどでアルコールを抜いて、体調を整えていたんでしょうね」
プロデビューから8年目、念願の賞金女王に輝くが、翌年5月に左手首を痛める。完治せぬままの戦いは、他の個所にも影響を及ぼし、身体的、精神的な限界から引退決意となった。ただ、関係者からは、「(賞金女王で得た)シード権が13年まで残っているので、完治させて復帰してほしい」という声も聞こえているが‥‥。
「ファンの一人としては、それは見たくないかな。今のゴルフ界は、宮里藍チャンや石川遼クンなど、小学生からエリートとして活躍するような世代交代の激しい世界になりつつある。その中で、常に賞金女王を目指すようなタイプの彼女にとって、過去の栄光を追わないこと、それこそが“引退の美学”と映りましたね」
古閑はシーズン中の引退発表の理由にしても、「私を応援してくれた、少しでも多くのファンにプレーを見てほしかったから」と語ったものだったが、それもまた、「実に彼女らしい発言」だったという。
「ツアー観戦って、試合だけでなく、個々のプレーヤーを見たくて集まるギャラリーが増えている。彼女は間違いなく、その一人でしょう。(10月21日の)『マスターズGCレディース』でも、連続3バーディを決めて、『まだまだ戦える』という活躍を見せてくれた。そんな華麗な花が一輪、欠けてしまうことは寂しい。でも、輝いている今だからこそ、次を目指してほしい。プロゴルファーを引退しても、次のステップでまた輝いてほしいと思います」
11月18日からのラストツアー「大王製紙エリエールレディス」で、みごとなプレーを見せてくれるに違いない。