WBCの侍ジャパンフィーバーに拍車をかけているのが、日系メジャーリーガーとして初の日本代表入りをしたラーズ・ヌートバーだ。本人もその活躍ぶりを「想像以上。信じられない状況が続いている」と興奮気味に話す。
ヌートバーは、高校時代は野球で3度、アメリカンフットボールでは2度、リーグMVPに選出された「二刀流」だった。2018年のドラフトでカージナルスから8巡目に指名されたが、「本塁打が少ない選手」と、その評価は低かった。
20年はコロナ禍で、マイナーリーグも中止。整備工として週6日、朝4時起きで時給20ドル(約2600円)のアルバイトを4カ月間続けた。
そして翌21年にメジャーデビュー。昨季は108試合に出場(打率2割2分8厘、14本塁打、40打点)した。出塁率と長打率を足したOPSは後半戦、ナショナルリーグで5位となり、今季の年俸は約1億2000万円に。
日本代表の栗山英樹監督は昨年11月、米メジャーリーグのウィンターミーティングに出向き、ヌートバーをリストアップ。大谷翔平の通訳の水原一平氏にアポイントを依頼し、3人によるZoom面談を実施した。これについて「I LOVE YOUと口説いた。冗談ですけどね」と栗山監督は明かしていたのだが、
「最終的にヌートバーがメンバー入りしたのは、大谷の後押しが大きかった」(侍ジャパン関係者)
今年1月、ヌートバーの侍ジャパン入りが発表された際、巨人、メッツで日米通算93勝した高橋尚成氏は自身のYouTubeチャンネルで「日本の外野手の方が、もっといい選手が山ほどいる。選ばれるような選手ではない」とダメ出し。これに異議を唱えていたのがダルビッシュ有だった。ラジオ配信アプリ(stand.fm)で「今(打者を)見る指標は打率だけではない。(ヌートバーの)OPSは 8割近いですから」と擁護したのだ。
大谷とダルビッシュの目が正しかったということだが、それに応えるヌートバーも見事だ。
(小田龍司)