立憲民主党が参院予算委員会で連日続けている、放送法の「政治的公平性」に関する総務省行政文書問題。その追及ぶりをメディアは大きく取り上げているが、矢面に立たされている高市早苗経済再生相はもちろんのこと、岸田文雄首相も、実はニンマリとしている。
参院で追及しているのは、旧郵政省出身の小西洋之氏、文書で指摘されている「サンデーモーニング」を放送するTBS出身の杉尾秀哉氏だ。メディアではTBSや、同じくやり玉に挙がった「報道ステーション」を放送するテレビ朝日と関係の深い毎日新聞と朝日新聞。つまり関係者が多く、追及する側はいきり立っているものの、それ以外の人たちには共感が広がりにくいのだ。
しかも、小西氏が追及しようとしたのは、安倍官邸が総務省に圧力をかけたという構図であり、高市氏は主たる追及の対象ではなかった。高市氏が自身に絡む文書の内容を否定し、議員辞職まで辞さないファイティングポーズを示したため、立憲民主党側も「そらクビを取ったれ」と高市氏追及に矛先を転じたのである。
閣僚になったとはいえ、最近は注目されることがなかった高市氏としては、久しぶりに脚光を浴び、答弁に立たされる機会が増えたことで「本人は楽しんでいる」(高市氏周辺)という。3月15日の答弁でも、杉尾氏が「ずるずる答弁が変わっている」と批判すると、高市氏は「私が信用できないのであれば、もう質問しないでほしい」と啖呵を切り、杉尾氏が言いよどむ場面もあった。
すっかり蚊帳の外の岸田首相だが、本人は満足している。というのも、報道各社の2月の世論調査を見ると、岸田内閣の支持率は日経新聞で43%、読売新聞で41%と、小幅ながらも上昇する傾向が目立ったからだ。マスク解禁など外的要因がその理由とみられるが、昨年、閣僚が不祥事で相次いで辞任した時とは大違い。岸田首相は立民と高市氏の対立を、高みの見物をしている状態だ。